プロ11年目の小鯛竜也(27=フリー)がツアー初勝利を飾った。台風22号の影響による強雨で最終組のスタート直前に中止が決定。前日の第3ラウンド(R)終了までの成績で、小鯛が通算13アンダーの203で優勝した。17歳でプロ転向もツアー出場権すら得られず、どん底にいた男にようやく光が差し込んだ。2週連続で国内男女ツアーの最終日が中止となり優勝が決まるのは、詳細な記録が残る78年以降初めて。

 ロッカー室の片隅に座り、小鯛はこの日の最終R再開を静かに待った。中断から1時間後、中止を告げる館内放送が流れる。外で待つ家族の元へと走った。苦労をかけた妻ゆいさん、2人の幼い子供と抱き合った。プロ転向から丸10年。紆余(うよ)曲折を経て手にしたツアー優勝だ。涙はない。歓喜の瞬間は、最高の笑顔だった。

 「長かった。試合に出られない時期が一番苦しかった。成績が悪くても文句ひとつ言わなかった妻には、頭が上がらないです」

 家族の夢が結実した。ツアーデビューまで要した歳月は4年。下部ツアーに出場して予選を突破しても上位には食い込めず、賞金は5万円ほど。会場への交通費と宿泊費を差し引けば赤字になる。4年前に結婚する際、金銭的に余裕はなく、ゆいさんに「こんな僕でもいいですか」とプロポーズ。妻はハウスキャディーをして家計を支えてくれた。

 「子供の顔を見るたび、何をしているんだろうと。稼がないといけなかった」

 14年末、1つ下の石川遼と沖縄で合宿した。「数えたくないほどのボールを打っていた」。自分の甘さに気付き、手に血がにじむほど練習した。「家族には感謝しかない。これで終わらず2勝、3勝としたい」。最終日中止も、小鯛には“恵みの雨”か。苦労を重ねた男に、初めて光が差し込んだ。【益子浩一】

 ◆小鯛竜也(こだい・たつや)1990年(平2)2月1日、大阪・阪南市生まれ。小学時代は野球との両立で捕手。中3の04年に日本ジュニア2位。クラーク記念国際高時代の07年10月に17歳でプロ転向。レギュラーツアーデビューした11年から4年間で出場4試合。16年に下部ツアーNovilカップで初優勝するなど結果を残し、今季前半戦の出場権をつかんだ。178センチ、66キロ。

 <小鯛竜也の優勝クラブ>

 ▼1W=ミズノ MP TYPE-2ドライバー(ロフト8・5度、ディアマナBF70プロトタイプ、長さ45インチ)

 ▼3W=テーラーメード M2 TOUR(T3 13・5)

 ▼2U=ミズノ プロジェクトX HZRD

 ▼アイアン=同 プロジェクトX(3~9、P)、プロジェクトX T7、ミズノプロS18

 ▼パター=スコッティーキャメロン ツアー・オンリー

 ▼ボール=タイトリスト PRO V1