熊本出身の重永亜斗夢(29=ホームテック)が熊本地震発生からちょうど2年のこの日、記録ずくめのスコアで首位に躍り出た。6アンダー4位からスタートし、自己ベストに並ぶ8アンダーで自己ベスト63をマーク。通算14アンダーの199で、首位から出てスコアを1つ落とした2位の石川遼(26=CASIO)に4打差をつけた。今日15日の最終日に熊本を勇気づけるツアー初優勝に挑む。

 重永は思わず笑ってしまった。16番パー3。寄せるつもりで打った8メートルのパットがラインに乗り、あれよあれよのバーディー。「調子が悪い」と言いながら神懸かり的なパットで、終わってみれば14番からの4連続を含む自己最多タイの8バーディー。スコア63は自己ベストを1打更新、第3日までの199ストローク(54ホール)も同様に3打更新と記録ずくめで首位に立った。

 大会前からショットの調子を崩し「毎ショット、びくびくしながら打ってます」と告白する。大会前日のプロアマではティーを前から打ってノーバーディー、3ボギーの75。第1日2位、第2日4位と上位にいても、出るのは愚痴ばかりだった。それが、取材で14日が熊本地震から2年と聞かされ気持ちが切り替わった。

 「スタートする前、すごく弱音を吐いていたけど、そんなこと言ってられないと。自分の気持ちも含め頑張らなきゃいけないと心に決めました」。大会前には熊本市で戦国時代の武将・加藤清正公を祭る加藤神社を参拝。「境内に石は転がっているし、熊本城も復興建設をしている。まだまだこれからです」と故郷の現状を思い出した。

 重永は「ネガティブの弱気しかないビビリ」を自認するが、それだけに「明日のためにできるだけ貯金しておこう」とバーディーを積み重ねた。2年前、震災直後に出場したこの大会でも、最終日最終組で4位と健闘した。悲願のツアー初優勝で、震災から3年目に入る熊本に朗報を届ける。【桝田朗】