「史上最高のレフティー」フィル・ミケルソン(米国)が、48歳の誕生日に前代未聞の違反を犯した。13番で動いているボールを打ち返し、2罰打を受けた。強風で乾いて止まりづらくなったグリーンに苦しむ選手が続出する中「ルールを戦略的に使った」という行為に非難が殺到した。

 この日2番目に難しかった13番グリーン上でミケルソンが信じられない行動に出た。カップ脇を抜けて下り傾斜で止まる気配のないボギーパットを小走りに追いかけ、先回りして打ち返した。「以前からやりたかった。ルールは知っているが、バンカーに落ちるよりはいい。無礼な行為と思われるのなら、謝ろう」。17オーバーの64位。本心なのか、悪びれずに言った。

 「自分の球が動いている間はその球をストロークしてはならない」との規則違反で2打の罰が加わり、パー4のこのホールで「10」。ただ、動いている球を故意に打つことを想定したルールではない。米国ゴルフ協会は急きょ会見を開き「ルールにのっとり2罰打」と強調したが、米全国紙USAトゥデー電子版は「フィル、そろそろ大人になれ」とたしなめ、スポーツイラストレイテッド電子版は「失格となるべき」と踏み込んだ。88、89年大会を連覇し、テレビリポーターとしてミケルソンにマイクを向けたストレンジ(米国)には「ナショナルオープンの舞台でやるべきではなかった」と直接批判された。

 99年大会で同様の違反をした“問題児”デーリー(米国)こそ現地メディアの取材に「スマートだった。2~4ストロークくらい縮める決断」と理解を示したが、少数派。14年前に同じコースで開催され、ミケルソンが2位だった全米オープンは、最終日の平均スコアが「78・727」を記録するなど、異常に硬く仕上がったグリーンに不満が噴出した。再び極めてシビアとなったセッティングへの抗議の意思表示だったのか。老若男女に愛される偉大な選手によって衝撃のルール違反が起きてしまった。【益子浩一】