黄金世代の小祝さくら(21=ニトリ)が、7バーディー、ノーボギーの65で回り、大会新の通算17アンダー、199で初優勝を果たした。

首位のイ・ミニョンと2打差2位から出て、激しいデッドヒートを制し逆転勝ち。万年2位といわれた勝負弱さをついに克服した。1打差2位に16アンダーのイ・ミニョン。三ケ島かな、成田美寿々が10アンダーで3位に入った。

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涙も、ガッツポーズもなかった。18番ホールでウイニングパットを沈めると、小祝は照れたような笑みを浮かべた。「ガッツポーズは、最終ホールのパットのときにしようと考えていて。でも、どういう風にしたらいいのか分かんなかった」と悲願の優勝で我を忘れていた。

17年のプロデビューから61戦目。これまで何度もはね返されてきた優勝を1つの目標に集中することでつかんだ。「今日は絶対7アンダーで回る」。その言葉通り、前半で4つのバーディー。1打差を追う、後半開始の10番パー4で、バーディーを奪い、ボギーをたたいたイ・ミニョンと入れ替わって首位に立った。その後もバーディーを2つ重ね、後半3バーディー。目標通りの7アンダーで優勝をつかみ「自分のイメージした通りにいけた。すごくうれしい」と喜んだ。

昨年は2位に4度も入りながら勝てなかった。3度目に2位に入った9月のゴルフ5レディースで申ジエにプレーオフの末敗れ、悔し涙を流した。その時から少しずつ意識が変わった。最終日前夜には辻村明志コーチから「優勝を自分がすると思ってプレーしないと、絶対に成し遂げられない」とアドバイスされ、その言葉を胸に強い気持ちで試合に臨んでいた。

泣かない娘に代わって母ひとみさん(39)は、優勝の瞬間、号泣していた。去年から欠かさず試合について回り、全戦出場を続ける娘を支えた。「去年とは全然違う。メンタルが成長した」。免許を取った娘に「自分で取った車なら運転していい」と副賞のベンツをネタにハッパをかけていた。

プロの世界では珍しい天然癒やし系キャラだ。優勝インタビューで一番うれしかったことを今回の優勝ではなく「BTSのライブで席が前から2列目だったこと」と答え、笑いを誘った。会見では20年東京オリンピック(五輪)に「出たい」とも口にした。おっとりした性格の実力者がついに目覚めた。【桝田朗】

◆小祝(こいわい)さくら 1998年(平10)4月15日、北海道北広島市生まれ。母ひとみさんが宮里藍の大ファンでレッスンに通ったことから、8歳でゴルフを始める。14年に北海道女子アマ選手権に優勝。16年にはニッポンハム・レディースに出場し8位でローアマ獲得。17年プロテスト合格。本格参戦の18年はトップ10に13回入るなど賞金ランク8位に入り新人賞と敢闘賞を獲得。158センチ、58キロ。家族は母と弟。

◆黄金世代の優勝 98年4月~99年3月生まれの女子ゴルファー。米女子ツアーで活躍する畑岡奈紗や、勝みなみら、アマチュア時代からの実力者がひしめく世代で、今季は20試合中7試合で黄金世代が優勝している。勝みなみの2勝、渋野日向子の2勝に、河本結、原英莉花、小祝がそれぞれ1勝ずつ。小祝の優勝は黄金世代では8人目となる。

<小祝さくらの使用クラブ>

▼1W=ダンロップ スリクソンZ785(シャフト=三菱ケミカル ディアマナB50、硬さS、長さ45インチ、ロフト9・5度)▼3W=同 スリクソン ZF85(15度)▼5W=同 ゼクシオ9(18度)▼7W=同 ゼクシオ(20度)▼4U=同 スリクソンZH85(22度)▼アイアン=同 スリクソンZ585(5I~PW)▼ウエッジ=同 クリーブランドRTX3(50、58度)▼パター=テーラーメイド スパイダーX▼ボール=スリクソンXV