AIG全英女子オープンを制した渋野日向子(20=RSK山陽放送)が、凱旋(がいせん)2戦目での優勝を目指し、大雨の中で調整した。

国内女子ツアー、NEC軽井沢72トーナメント(16日開幕、長野・軽井沢72ゴルフ北C)に向け、14日は初体験のコースを確認。練習ラウンド後、激しい雨に打たれてもただ1人パッティング練習をやめなかった。「危ね~、寝坊した」「静かに生きたいけどもう無理」などと渋野語を連発しつつ、真剣な姿を見せた。

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浅間山から近い軽井沢に突然、激しい雨が降った。濃い霧が立ちこめ、どんどん視界が悪くなる。練習をしていた選手は、次々とクラブハウスに戻ってきた。そんな中、たった1人、雨に打たれながらグリーン上に立ち、黙々とパッティングをこなす選手がいた。全英を制した渋野だった。時間にして10分ほど。そう長くはなかったが、その姿に次の試合にかける強い決意が込められていた。

「どうせあのくらいの雨が降っても、やるじゃないですか。試合は。だからやめずに続けていました」

今季、国内で2勝を挙げた勢いのまま“世界一”に立った。天真らんまんな姿がクローズアップされるが、急成長の背景には並々ならぬ努力がある。昨年、同じ下部ツアーで鎬(しのぎ)を削った河本結は「彼女の姿を見てきたからこそ、努力は裏切らないということを知った」と言う。帰国後すぐに臨んだ前週の北海道meijiカップは13位で、渋野は「先週ほどの疲れはないから、もうちょっとましなプレーはできそう。後は適当に頑張ります」。そう笑い飛ばしたが、勝ちたい思いは誰より強い。

そんな固い意思は見せないのが魅力だろうか。この日の練習ラウンドは午前7時台のスタートで、同6時半にホテルを出発する予定だったという。ところが同5時半に目覚まし時計をかけたはずが、アラームを「止めては寝る」を繰り返し、出発12分前に起きた。

「歯をガーッと磨いて出てきました。とりあえず、歯だけは磨いた。部屋から出たのが6時32分。あっぶね~っ」

心を癒やすために、前日13日には「キヨキヨ(清々)しに行こう」と近くの滝を見に出かけた。するとファンに囲まれ「顔がバレた」と苦笑い。とは言うものの嫌がるそぶりもなく、どこか楽しげにこう続けた。

「『写真を撮って』と言われたから私が撮ろうとしたら、私と撮りたかったみたいで。静かに生きたかったけど、もう無理っすね。私は有名人か! 一般人でいたかったわ!」

ただ渋野節で周囲をなごませるだけではない。胸に秘めた勝利への執念が、確かにある。【益子浩一】