AIG全英女子オープンを制した渋野日向子(20=RSK山陽放送)が、凱旋(がいせん)2戦目での優勝を最終18番で逃し、涙した。2位から出て5バーディー、1ボギーの68で回り通算13アンダーの203。首位タイで迎えた最終18番パー4でバーディーなら優勝だったが、勝負に出て痛恨の3パットのボギーとしV逸。穴井詩(31)がイ・ミニョン(27=韓国)とのプレーオフ(PO)を制し、2年ぶりツアー3勝目を挙げた。

最後まで笑顔だった。クラブハウスに戻った渋野は、母伸子さんと目が合う。肩をトントンとたたかれると感情が込み上げてきた。「作り笑いはしたくない」。いつもそう言うが、この日ばかりは、心からの笑顔ではなかった。小走りでロッカー室に入ると、隠れて泣いた。悔しかった。どうしても、勝ちたかった。

「無理に笑っていました。人前で(涙を)見せるものではないから、我慢をしていました。(涙が)出たっちゃあ、出ましたね」

通算14アンダーの首位タイで迎えた最終18番は、全英と同じ舞台になった。最終組の渋野がバーディーなら優勝。フェアウエーからの第2打は池を越え、グリーンへ。ピンまで5メートル、下りのフックラインはメジャーを制した最後の1打と同じ距離だった。大観衆が固唾(かたず)をのんで見守る。勝負をかけたバーディーパットは、カップをすり抜け2メートルオーバーした。さらに、入れれば3人によるPOになったパーパットまで外し、3パット。ボギーでV逸。2週前は攻めて勝ち、今回は攻めて負けた。

「最後はむちゃくちゃ緊張しました。めっちゃ手が震えていた。『情けね~な。何で緊張しよるんかな』と思った。自分で自滅して、最後に台無しにしてしまった。悔しい思いはたくさんしてきたけど、今回が最近では一番悔しいです」

笑顔の裏に、人知れず流した涙と努力の跡がある。98年度生まれの黄金世代では最も遅れてきた選手の1人。今季は申ジエ(韓国)に続く賞金ランク2位の約8479万円を稼ぐが、昨年はレギュラーツアー出場1試合で賞金0円。試合にすら出られない1年前の屈辱がある。

「勝たなければいけないですから。この悔しさは忘れずに練習するしかない」

試合が終わり1人、涙を流してから1時間半が過ぎた。渋野は待っていたファンと関係者1人、1人に手を振りながら会場を後にした。「次もまた頑張ります。応援よろしくお願いします!」。その時は心からの笑顔だった。【益子浩一】

◆NEC軽井沢72◆

   順位 選手名   通算  1R   2R    最終 

-14(1) 穴井詩    202=67(7) 70(8)  65

   (2) イ・ミニョン 202=67(7) 69(4)  66

-13(3) 渋野日向子  203=67(7) 68(2)  68

   (3) 浜田茉優   203=64(1) 70(1)  69

-11(5) 申ジエ    205=68(13) 72(24)  65

   (5) 上田桃子   205=68(13) 71(18)  66