賞金ランク3位の渋野日向子(21=RSK山陽放送)が、メジャー制覇した8月のAIG全英女子オープン以来となる2位スタートを切った。前半17番パー5のダブルボギーでスイッチが入り、18番以降の10ホールで6バーディーの猛チャージ。5アンダー、67をマークした。先週の伊藤園レディース予選落ちで“終戦宣言”した賞金女王争いだが…。今大会優勝なら、奇跡のシナリオは動きだす。森田遥(23)が7アンダーで首位に立った。

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前半17番パー5だった。グリーン右手前に広がる池を越えたラフから、渋野の10ヤードのアプローチはピン上4メートルへ。下りのパーパットを外し、4メートルもオーバー。返しも入らずダブルボギーで1オーバーになった。

「あ、素ダボです。本当にダボの例ですよね。クソ野郎でした。やっぱりダボ打つな、みたいな。イーグルチャンスにできるようなホールでやらかして」。

行ったり来たりのドタバタを笑って説明したが、その怒りで反撃に転じた。

18番パー4で残り115ヤードの第2打を50センチにつけ、バウンスバック(スコアを落とした後のバーディー)。後半アウトで加速した。2番パー4で残り142ヤードを7番アイアンで50センチに。4番は3メートルを決めた。5番パー5(485ヤード)は残り214ヤードを4番ユーティリティーでピン8メートルに2オンさせ、イーグル逃しの2パット・バーディーだ。

「後半盛り返してというのは久しぶりな気がします」。バックナインの31は、ツアー初優勝した5月サロンパスカップ第3ラウンドのアウトに並ぶハーフ自己ベストスコア。2位発進は、8月1日の全英第1日以来。国内では5月リゾートトラスト、6月ヨネックスレディースに並ぶツアー自己ベストになった。

国内ツアーで3月末アクサレディース以来、国内では出場26戦ぶりに喫した、前週の伊藤園レディースでの予選落ちも、大きい。「予選通過が当たり前じゃないとわかった。最初から思い切っていかないと。全英でできたようなプレーができなくなって。(ギャラリーの)皆さんにいいところを見せたいと思った」。移動の合間、故郷の岡山に戻り、父悟さんとの立ち話も刺激になった。内容は明かさなかったが「父と久しぶりにまじめな話をした。全英の後、そんな時間なかったかな。心持ちの問題です」という。

賞金女王争いは、伊藤園レディースで涙の終戦宣言をした。この日も意識は「全然なかったです。何にも考えてないです」と笑い飛ばした。賞金ランク1位鈴木とは、残り2戦で約2431万円差。確かに遠い。しかし、今大会で優勝すれば…。全英で起こしたような奇跡の幕が上がるかもしれない。【加藤裕一】

◆渋野の逆転戴冠条件 賞金ランク3位渋野は、1位鈴木と約2431万円差。今大会終了時点で、最終戦LPGAツアー選手権リコーカップ(28日開幕)の優勝賞金3000万円差以上をつけられると、賞金女王の可能性は消滅する。逆に渋野が今大会に優勝(賞金1800万円)すれば、鈴木が単独2位(同880万円)でも賞金差は約1511万円まで接近。賞金ランク2位申ジエの動向にもよるが、最終戦で渋野優勝(同3000万円)、鈴木単独3位(同1200万円)などとなれば、大逆転女王の可能性がある。