2020年のゴルフツアーは国内、海外ともに新型コロナウイルスの感染拡大に伴いストップしている。ここまで中止、延期となった各大会の名場面を振り返ります。

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▽2019年(平31)大会(4月11~14日、米ジョージア州オーガスタGC)

スーパースターの復活に世界が歓喜した。当時43歳のタイガー・ウッズ(米国)が、14年ぶり5度目の優勝を逆転で飾った。97年の史上最年少21歳でのマスターズ制覇から22年。10度の賞金王などの栄光以上に、近年は相次ぐ故障、手術、不倫、セックス依存症、逮捕など影の部分ばかりがクローズアップされた。1位が当たり前だった世界ランクも、一時は1199位まで落ちた。タイガーは終わった-。そんな世間の声を吹き飛ばす、11年ぶり15度目のメジャー制覇だった。

11位、6位と徐々に順位を上げて迎えた第3ラウンド(R)は、6バーディー、1ボギーの67で回り、通算11アンダーの205で2位につけた。第2Rの68に続く、連日の「タイガー・チャージ」に人垣は二重、三重にでき、大歓声が起きた。ひしひしと伝わる期待に、百戦錬磨のウッズも重圧を感じていた。それでも「昔からプレッシャーは感じている。それを感じなくなった日が引退する日」と、大舞台で再び優勝争いの渦中にいる喜びの方が大きかった。

最終日。赤いシャツに黒いズボンの「勝負服」で臨んだ。10番を終えて3バーディー、3ボギーのイーブンパー。スコアを伸ばせずにいる間に、2打差に10人前後がひしめく大混戦に突入していた。そこから13番、15番とパー5でバーディーを奪い、抜け出した。16番パー3では、第1打を60センチにつけ、さらにバーディー。勝負を決めた。最終18番のグリーンで、優勝を決めるパットがカップに吸い込まれると、雄たけびをあげた。両手でガッツポーズもつくった。6バーディー、4ボギーの70で回り、通算13アンダー275。ウッズのガッツポーズに、大観衆も両手を突き上げて応え「タイガー・コール」がこだました。

復活優勝に「まだ第一線で優勝できるとは想像していなかった」と率直な思いを口にした。「引退を考えたこともあった」とも明かした。髪が薄くなったことを自虐的に笑いもしたが「カムバックを果たして、マスターズで優勝できるのは最高のこと」とかみしめた。栄光と挫折を世界中が知るからこそ、劇的な復活は世界に勇気を与えた。

■過去5年の優勝者

15年 ジョーダン・スピース(米国)

16年 ダニー・ウィレット(英国)

17年 セルヒオ・ガルシア(スペイン)

18年 パトリック・リード(米国)

19年 タイガー・ウッズ(米国)