国内ツアー通算64勝、数々の名勝負を演じたゴルフ界の“レジェンド”中嶋常幸プロ(65)による「ゴルフ流 Education」。畑岡奈紗プロもアマ時代に指導を受けた「トミー・アカデミー」を主宰した経験も踏まえ、子育て世代、指導者へメッセージを送ります。

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僕は小4から父の指導でゴルフを始め、ジュニア時代は「なんとか父をゴルフで負かしやりたい」という気持ちがあり、頑張りました。プロ仲間の中には、親や指導者に「うまくなって、褒めてもらえるのがうれしくて」と、モチベーションになった人もいる。僕も小6の時に「目標のスコアをクリアしたら、新しいクラブを買ってあげる」と言われ、目標が明確になったことで、がぜんやる気が出た記憶があります。

「褒めて伸ばす」「厳しくして伸ばす」など、伸ばし方はそれぞれです。

実は僕の場合、どんな戦績、記録を出しても、なかなか父に褒めてもらえませんでした。父は僕を「褒めて伸びるタイプではなく、褒めたら緩んでしまうタイプ」と思ったのでしょう。常にプレッシャーをかけてきました。

ある著名なソプラノ歌手が、自分を批判する手紙などに目を通し、読むことによって自戒と発奮の材料にしていたという話を聞いたことがあります。その手紙が彼女の「燃料」になったという話。そのタイプだったかもしれません。

ゴルフの試合について、僕が父に褒められたのはたった1回だけ、90年日本オープンで優勝した時だけでした。

※(北海道・小樽CCという国内屈指の難コースの上、当時大会3連覇を狙った尾崎将司との激闘で、最終日に4打差を逆転した伝説的名勝負の1つ)

父に「よくやった」と言われました。それまで褒めてくれなかった父が褒めてくれた。これは大きなエネルギーになりました。

褒めるのも厳しくするのも、子どもの個性やタイミングがある。1人1人と向き合い、よく見ていれば、わかります。(中嶋常幸)

◆中嶋常幸(なかじま・つねゆき)1954年(昭29)10月20日、群馬県生まれ。父巌氏の英才教育で腕を磨き、73年日本アマで最年少優勝。75年プロ入り。翌年初勝利を挙げ、13年スターツシニアまで国内ツアー通算64勝、レギュラーツアー賞金王4回。青木功、尾崎将司とともに「AON時代」をつくる。88年全米プロ3位など、米メジャー4大会すべてでトップ10入りした初の日本選手、史上初の日本タイトル7冠達成。19年1月日本プロゴルフ殿堂入り。一方で12年から「トミー・アカデミー」を主宰し、畑岡奈紗らを育てた。静ヒルズCC所属。