▽2019年(平31)大会(5月23~26日、奈良・KOMA・CC)

大槻智春が、プロ9年目で初勝利を挙げた。首位と3打差の4位から出て65で回り、星野陸也とのプレーオフに突入。激闘の末、4ホール目にバーディーを奪い、念願の優勝をつかんだ。

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最終ラウンドでも同組で回り、ともにスコアを伸ばしあった星野とのプレーオフ。3ホール目までは、互いに譲らずパー。そして迎えた4ホール目。大槻は、バーディーパットを沈め、悲願の優勝をつかんだ。

天国の兄にささげるツアー初勝利となった。89年に、ゴルフをしていた小学5年の兄智之さんが脳腫瘍で他界。どん底にいた両親は、翌90年に第3子となる男児を授かった。茨城県内で肉屋を営む父隆さんは「このままでは、いつまでも家族が暗いまま。『最初からやり直そう』と、かみさんに頼み込んだんです」。

生まれた子は、亡くなった長男から1字をとり、智春と名付けた。兄と同じく7歳からクラブを握らせ、晴れの日も、雨の日も、父と二人三脚でプロの道を目指してきた。

07年、鹿島学園高時代に関東ジュニア選手権で優勝。10年、日大2年のときに日本アマチュアゴルフ選手権で8位となり、その後にプロに転向した。プロ入り後もなかなか勝てなかったが、17年に下部のチャレンジツアー、ザ・ロイヤル・ゴルフクラブチャレンジで優勝。その年の賞金王となり、18年のレギュラーツアー出場権をつかんだ。

そんな苦労に父からは「パッと咲く花はすぐに枯れる。苦労をした方がいいんだ」と励まされてきたという。最終日前夜、茨城から寝ずに車を走らせて会場まで駆けつけた父は「智春の兄貴が応援してくれたから勝てた。長男が亡くなって、1年後に生まれた、あの子が優勝するなんて。最高の息子です」としみじみと語っていた。

同年8月の長嶋茂雄招待セガサミーカップでは、史上9人、10例目の2連続イーグルを達成。その存在と実力をゴルフ界に印象づけた。「ゆくゆくは米ツアーに行きたい」という野望を持つ大槻は、一足先に米ツアーで活躍する小平智とは日大時代の同級生。夢へ向けて一歩、一歩階段を上がっていく。

■過去5年の優勝者

15年 片岡大育 -17

16年 趙炳旻 -6

17年 今平周吾 -9

18年 時松隆光 -10

19年 大槻智春 -19