国内ツアー通算64勝、数々の名勝負を演じたゴルフ界の“レジェンド”中嶋常幸プロ(65)による「ゴルフ流 Education」も今回で一区切りです。ジュニア育成のための「トミー・アカデミー」を主宰した経験も踏まえ、子育て世代、指導者へメッセージを送ります。今回は勝負師のイメージとはひと味違う、甘い?「おじいちゃん目線」も…。

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僕も孫を持つ立場になって痛感していますが、祖父母というのは孫にめちゃくちゃ甘くなってしまいますね。正直、僕も超甘です。初孫は「ママは怖い。パパも怖い。おばあちゃんはちょっと怖い。おじいちゃんは全然怖くない」なんて言いますし、それを聞いて僕はニコニコ笑ってしまうほどです(笑い)。

祖父母というのは、孫にとってはどこかで信頼や安心感を抱き、同時にちょっとした遠慮があり、若くないことから「大切にしたい」と思う存在でしょう。必要以上に厳しくならなくてもいいとも思います。

ただ、僕の中で「ここは甘やかし過ぎてはいけない」と思っていることが、2点あります。まず「あれ、食べる?」「これ、おいしいよ」と、食べ物を与え過ぎて不健康に太らせてしまうこと。もう1つは「お小遣い、いらないの?」「何か欲しいものは?」とお金や物を与えすぎて、その価値観を失わせてしまうこと。この2つは最もよくない、警戒すべきことと思います。与え過ぎで、健康やお金などの価値観を損なわせては、結果的に本人のためにはならないでしょう。

親の過保護も似ていて、子の自立を遅らせてしまう懸念があります。一方で、子の「親離れ」よりも親の「子離れ」の方がはるかに難しいというのが、僕の認識です。子が親から離れて自立しようとしても、親は子が離れていくのが不安で仕方がない、離れていっても不安で仕方ない、ということでしょう。中には「自主性が大事なので、うちは本人に任せています」と言いながらも、知らず知らずに細かく口を出し、面倒を見てしまうケースも少なくないようです。

子や孫の成長のために、本当に必要なことを見極めたいですね。(中嶋常幸)

◆中嶋常幸(なかじま・つねゆき)1954年(昭29)10月20日、群馬県生まれ。父巌氏の英才教育で腕を磨き、73年日本アマで最年少優勝。75年プロ入り。翌年初勝利を挙げ、13年スターツシニアまで国内ツアー通算64勝、レギュラーツアー賞金王4回。青木功、尾崎将司とともに「AON時代」をつくる。88年全米プロ3位など、米メジャー4大会すべてでトップ10入りした初の日本選手、史上初の日本タイトル7冠達成。19年1月日本プロゴルフ殿堂入り。12年から「トミー・アカデミー」を主宰。静ヒルズCC所属。