新世紀世代(01年度生まれ)の山下美夢有(19=加賀電子)がツアー初優勝を飾った。

最終組の1組前で回り、7バーディー、1ボギーの66で通算14アンダー、202。2打差を逆転、2位に5打差の圧勝で、14年勝みなみの大会記録・通算11アンダーを更新した。「19歳259日」の10代Vは同世代の笹生優花に続き16人目で、史上13番目の年少V。身長150センチ。現在ツアーで最も小さなプロがでっかい勲章を手にした。

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満足度100%だ。「本当にたくさんの方々に支えていただいたおかげです」。18番グリーン横の優勝インタビューで、山下の笑みを感謝の涙が彩った。プロ20戦目の歓喜。早かった。それでも、19歳には19歳なりの充実感がある。

序盤に2打差を詰め、追い越し、5打差をつけた。古ぼけたパターが大活躍した。スコッティキャメロンのセンターシャフトのマレット型。「得意はパット」と自負したプロ1年目の昨年、部門別ランクの平均パット数(パーオン時)で68位と低迷した。「アマチュアと違ってグリーンが速い。距離感が全然わからなくなった」。ひどいときはロングパットで5メートルもオーバーしたり、ショートしたり…。3パットを繰り返し、20年は終わった。

オフ、大阪の自宅で古いパターを引っ張り出した。小学生の時、父勝臣さん(46)が買ってくれたが、全然使わなかった。「昔はセンターシャフトって…と。“ネックがないのはあかん”と思ってた。それが使ってみたら“結構ええなあ”と」。きれいに真っすぐ引けて、真っすぐ出せる。正しいストロークを取り戻すのに最適で、今年7戦目で5戦に投入。スランプを父のパターに救われた。

レジェンドにも感謝しきれない。中嶋常幸(66)。同じダンロップ契約プロの縁で1月に3日間、弟子入りした。苦手のアプローチや心構えを指摘され、ショートゲームの練習を徹底した。2週前のヤマハ・レディースで2位に終わった時「良くなってるよ」と電話をくれた。

パーオン率12位のショットメーカーは平均パット数が45位まで上昇し、パーセーブ率も14位に。150センチの小さな体にトッププロの力が備わった。「初優勝が目標でしたが、次の目標を決めないと」。山下が声を弾ませた。【加藤裕一】

◆山下美夢有(やました・みゆう) 2001年(平13)8月2日、大阪・寝屋川市生まれ。ゴルフは5歳から。大阪桐蔭高3年だった19年プロテストで、笹生優花、西郷真央とともに“高校生合格”。ドライバー飛距離240ヤード。150センチ、54キロ。家族は両親、弟、妹。憧れのプロはタイガー・ウッズ。好きなアーティストはC&K。好みのタイプは俳優の志尊淳、格闘家の江川優生。

◆リトルV 88年ツアー制施行後、最も背が低いツアー優勝者は149センチの馬場ゆかり(3勝)。山下は、ミレニアム世代の西村優菜と同じ150センチで“2番目に小さなチャンピオン”になった。

<山下美夢有の優勝クラブ>

▼1W=ダンロップ スリクソンZX7(シャフト=フジクラ・スピーダー569TR弐、硬さSR、ロフト角9・5度)▼FW=スリクソンZX(3W15度、5W18度)▼ユーティリティー=スリクソンZX(4U22度、5U25度)▼アイアン=スリクソンZX5(6I~PW)▼ウエッジ=クリーブランドRTX ZIPCORE(48、52、58度)▼パター=スコッティキャメロン セレクトGoLo S▼ボール=スリクソンZ-STAR XV