渋野日向子、畑岡奈紗、小祝さくら、原英莉花-。現在の女子ゴルフを席巻する98年度生まれ「黄金世代」で、10人目のツアー初優勝は、またもお預けとなった。

9日まで茨城GCで行われた今年最初の国内メジャー、ワールド・サロンパス・カップ。最終日を2位に3打差の首位で出たのは、この世代で現在、屈指の安定感を誇る高橋彩華(22=東芝)だった。だが最終日は3バーディー、3ボギー、1ダブルボギーの74と2つ落とし、通算10アンダー、278。5位に終わった。14アンダーで2位から逆転優勝した西村優菜に、4打差もつけられていた。

好成績の3人で回る最終日最終組は、今大会で5度目だった。首位から出るのも4度目。だが、ことごとく逆転を許している。ホールアウト後は「あとは最終日だけという感じなので、また次のチャンスがきたら試行錯誤しながら、早く優勝できるように頑張りたい」と、振り絞った。

西村、大里桃子と同組で回った最終日は、2番パー3で6メートルのパットを決め、バーディーを先行させた。だが4番パー4で、50センチ余りのパーパットがカップに蹴られてボギーとすると、雲行きが怪しくなった。

このホールは、最初に西村が2・5メートルのパットを決めてパーを拾い、ガッツポーズで気迫を前面に出していた。次に大里が1メートルのパットを決めてバーディー。こちらは静かに喜びをかみしめていた。そんな同組の2人の追い上げムードを、正面から受け止めてしまった。

プロキャディーがついていなかったため、ライン読みなどの助言を求めることも、談笑するなどして気を紛らわすこともできなかった。2人が去り、はるか後方に控えるハウスキャディーを除き、実質1人残った静かなグリーン上で、なかなか50センチ余りのパーパットを打ち出せなかった。緊張が外から見ていても伝わるこのパットを外して以降、明らかに高橋はグリーン上で落ち着きをなくしていった。

前半は辛うじて大里と並び、スタート時点と同じ12アンダーで首位を守った。だが12番パー4で陥落。第2打はグリーンを大きく外し、左の林の中に入れた。アプローチはグリーンに乗らず、カラーからの第4打をパターで打ったが、かすりもせず大きくオーバー。ボギーパットも外し、痛恨のダブルボギーをたたいた。終盤は15、16番で連続ボギーをたたくなど、優勝争いに加われていなかった。

最終日に首位から15位に転落したKKT杯バンテリン・レディース後、移動の空港で母真由美さんに言われた。「毎試合トップ10が目標でいいんじゃない」。初優勝への重荷が軽くなり、第3ラウンド終了後も「トップ10への貯金ができたぐらいに思っています」と笑っていた。

KKT杯バンテリン・レディースでは、最終日にバーディーなし、5ボギー、1ダブルボギーの79と大崩れした。今年最初の国内メジャーのワールド・サロンパス・カップでは、優勝争いから脱落はしていたが、17、18番で意地のバーディーを奪った。「最終日に崩してしまったのはすごい悔しいけど、上がりでバーディー、バーディーを取れたのは、次の優勝争いにつながるかなと思いました」。厳しいプロの世界で、前を向くしかないのは、誰よりも高橋が理解している。

「優勝争いを重ねるごとに内容は良くなっているので、今年残っている試合で、1試合くらいはモノにできるように、また明日から練習を頑張りたい」。一足飛びで駆け抜けている同級生と比べれば、高橋の歩みは遅いかもしれない。それでも一歩ずつ、確実に前進している。「いつか」のため、そして大きく飛び上がるため。今は1度しゃがみ込み、大きな飛躍に備えている時期なのだと思えれば、気持ちも軽くなるだろう。【高田文太】