プロ11年目の青木瀬令奈(28=フリー)が、4年ぶりとなる涙のツアー2勝目を挙げた。最終組で5バーディー、ボギーなしの67をマークして通算17アンダー、271。稲見萌寧との4打差を逆転した。コロナ禍の昨年「引退」も考えた日本女子プロゴルフ協会の“選手会長”が、21年5勝の“最強プロ”との直接対決を制した。今大会優勝で、メジャー・AIG全英女子オープン出場権も手にした。

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青木が腹をくくった。同組の稲見、前の組の西郷、山下に1打リードで迎えた16番パー3。ピン位置は、左前に広がる池越えエリア。左からの風向きは微妙だった。「池に入れてもしょうがない、ぐらいの気持ちだった」。右サイドに逃げず、6番ユーティリティーで155ヤード先のピンを狙った。ピン奥2・5メートルにつけていた稲見の内側、2メートルへ。チャンスを決めて、2打差に広げて逃げ切った。

4年前、初優勝のヨネックスレディースは36ホール短縮競技。「ちゃんと3日(54ホール)で勝たないと、と思っていた。やっと優勝できました。胸を張れます」。涙があふれた。15年から師事、キャディーも任せる大西翔太コーチと抱き合った。

飛ばないプロだ。20-21年シーズンのドライバー平均飛距離218・03ヤードは、100位以下のない部門別ランク97位。1位原英莉花の258・06ヤードは雲の上。237・18ヤードで38位稲見にはこの日、20~30ヤードは置いていかれた。「大変でしょ?」と言われたら「それが当たり前のゴルフ人生」と割り切る。アイアンは7番から。9番までのウッド5本、ユーティリティー2本を操り、勝負する。

30歳が近づけば、考えることはある。コロナ禍の昨年、世界を覆う暗いニュースに心の針がネガティブに振れた。

「私、何歳ぐらいまでかな」-

20年からツアーのプレーヤーズ委員長となり、選手と協会のパイプ役になった。中堅だ。黄金、ミレニアム、新世紀と年下が席巻するツアー事情を思えば「引退」の2文字が頭に浮かんだ。

5月、親交のあるF2ドライバー・松下信治と食事をした。「今が“来たかった場所”でしょ?」。生死をかけたフィールドに身を置く1学年下の後輩に言われて、ハッとした。「(大西)コーチにも同じことを言われて。終わりを決めずにやろうって」。この日朝、米国の渋野日向子からLINEが入った。

「朝早くすみません。頑張ってください」

朝に返事はしない主義だが「頑張ってくるよ」と返した。

もう迷わない。「絶対に表に出さなかったけど、優勝したいと思い続けた1週間でした。これからも3勝目に向かって頑張りたい」。28歳のお姉さんプロが、はっきりやる気を口にした。【加藤裕一】

◆青木瀬令奈(あおき・せれな)1993年(平5)2月8日、群馬県前橋市生まれ。名前は、両親が音楽家で「セレナーデ」から。ゴルフは7歳から。前橋商高卒業後、11年にプロテスト合格。15年に賞金ランク27位で初シードを奪取、17年ヨネックスレディースでツアー初優勝。20年から日本女子プロゴルフ協会で選手会長的なプレーヤーズ委員長に。宝塚歌劇ファン。153センチ、50キロ。

◆全英切符 今大会成績及び今大会終了時点の賞金ランクにより、5人がメジャー・AIG全英女子オープン(8月19日開幕、英国カーヌスティーGL)の出場権を獲得した。

取得者は以下の通り。

◇大会上位2人=青木瀬令奈、稲見萌寧(同じ2位タイの山下、西郷より世界ランク上位のため)。

◇賞金ランク上位3人(有資格者を除く)小祝さくら、古江彩佳、原英莉花。

 

▽65の猛チャージで15位から5位。賞金ランク1位も守った小祝 今日のパットはすごい。本当に。この感覚を忘れなければ…。でも、ちょっと不安な点はまだたくさんあるので、しっかり直していきます。