東京五輪代表入りの可能性を残す渋野日向子(22=サントリー)が、驚異的な巻き返しで、今年のメジャー3戦目で初となる予選通過を確実にした。

1イーグル、2バーディー、2ボギーの70で回り、通算2オーバー、146でホールアウトした。17、18番の上がり2ホールで、一気に3つもスコアを伸ばし、ホールアウト時点で58位。逆転での東京五輪代表入りには、今大会で最低でも単独5位以上の成績が必要な中、予選落ちは回避し、首の皮一枚つながった。

アウトコースの前半は、出だしの1番パー4でボギー発進となった。第2打をグリーン手前のバンカーに入れると、第3打はピンまで3メートル余りと寄せきれず、パーパットを決められなかった。その後は8ホール連続パー。第1ラウンドの3ホール目、12番パー5以降、24ホールもバーディーから遠ざかったまま、1つ落として折り返した。

それでも後半に飛び出したミラクルショットが、渋野の息を吹き返した。10、11番と連続パーで迎えた12番パー5。残り80ヤード余りからの第3打は、グリーン手前の土手に当たり、傾斜を下って池に沈んだ。伸ばしたいパー5で、バーディーのチャンスすら与えられず、1打のペナルティーが加わった。だが落ち込む間もなく、ほぼ同じ位置から放った第5打が、大歓声を巻き起こした。グリーンのピン奥に着弾すると、バックスピンで傾斜を下ったボールは、そのままカップに吸い込まれた。渋野は右手で口を覆い、驚きの表情。同組で43歳のベテラン、クリスティー・カー(米国)が、思わず万歳して祝福する、驚異的な一打でパーをセーブすると、笑顔が止まらなかった。

これで勢いに乗り、直後の13番パー4で、実に28ホールぶり、この日最初のバーディーを奪った。残り120ヤード、フェアウエーからの第2打を4メートルにつけ、これを沈めた。ショットとパットがかみ合ってきた。

16番パー4を落として再びボギーが先行すると、後がなくなり、攻めのゴルフへと転換するスイッチが入った。この時点でのカットラインを、2~3打下回る5オーバー。ところがここから、優勝した19年のAIG全英女子オープンをほうふつとさせる、強気の攻めが帰ってきた。17番パー3は、ピンを果敢に攻めて1・5メートルにつけてバーディーを奪った。

圧巻は18番パー5だった。ティーショットをフェアウエーに運ぶと、210ヤード余りの第2打で3番ウッドを握り、風を切り裂いて池越えの2オンに成功。さらに8メートルのイーグルパットを沈めると、右手で力強くガッツポーズをつくり、再び大歓声に包まれた。カットラインが2オーバーと3オーバーの間を揺れ動く中、文句なしの2オーバーまでスコアを戻し、予選通過を確実にした。

ホールアウト後は「今日はアンダーを出すしかないと思っていたので、最初から、なかなか流れが来なかったんですけど、最後は攻めるしかないと思って、イーグルを取れてうれしかったです」と、満面の笑みを見せた。

反撃の転機となった、12番のミラクルパーについては「池ポチャしちゃいましたけど、その後、入ってくれたので気分よく次のホールに行けた。本当に流れが来ていたのかなと思います。(12番の第3打は)けっこう悔しかったんですけど、イライラしている暇もないですし『なんとかボギーで』と思って打ったのが、すごい入り方をしたので(笑い)。まあ、あそこですぐに切り替えて打てたことで、ああいう結果になったので、すごくよかったかなと思います」と、自身も予想以上の結果となった一打を興奮気味に振り返った。

この日はティーグラウンドが前に出ていた18番は、実は練習ラウンドでも2オンを狙わないと、キャディーと確認していたという。「練習ラウンドでは、前のティーグラウンドでも(2オンを)『狙わない』というふうに話していたんですけど『もう、こうなったら狙うしかない』と思っていた。(ティーショットの)ドライバーもしっかりと振って、ギリギリ狙える位置に行ったので。それを気持ちで(イーグルを)取れたので、なんか、いろいろあったけど、頑張ってよかったなと思いました」。最高の形で、今年のメジャーでは初の決勝ラウンドに進出。「いやー、明日があるのが、すごいうれしくて(笑い)。あと2日。悔いを残さないように、しっかりとプレーできたらいいかなと思います」と、最後まで笑顔が止まらなかった。