ツアー最軽量50キロの安本大祐(34=テラモト)が首位と2打差4位で決勝ラウンド(R)に進出した。この日はボギーなしの66で通算9アンダー。後半アウトは台風余波の風に耐え、7つの1パット・パーを拾う粘り腰でプロ14年目のツアー初優勝に前進した。稲森佑貴が通算11アンダーの首位に浮上した。

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安本が耐えた。後半は1番のバーディー後、試練の連続。2番パー5はバンカーからバンカーを渡り歩いた。4番以降はラフ、バンカー、エッジからしのぎまくる。最終9番パー4はバンカー“目玉”からピン4メートルにつけ、ねじ込み、6連続の1パット・パーを締めくくった。

「前半もそうでしたが、後半(アウト)は本当にしっちゃかめっちゃか。スコアは満足だけど、ゴルフはハラハラの連続でした」。こん身のボギーなしの66。ただ、今までのプロ生活を思えばどうってことない。

マスターズ覇者松山英樹らを輩出した東北福祉大出身のプロ14年目。とはいえ華やかさと無縁のキャリアだ。08年にプロ転向後、11、12年と14年から4年連続でツアー獲得賞金が0円。先週のパナソニックオープン11位が自己ベストフィニッシュだった。ツアー外のローカル競技で賞金を稼ぎ、生活をつなげる日々に「いつも“次の試合に出られるのかな”という不安ばかり。“ゴルフをもう続けられないんじゃ”という恐怖は今もある」。7年前に妻友香さん(38)と結婚し、長男宗祐君(3)にも恵まれた。家族のためにも、頑張らないといけない。

ある意味プロらしい、個性的な外見だ。公称の身長175センチは本当だが、体重55キロは「四捨五入で60キロになる」と思って少し盛った。「今は50キロぐらい。40キロ台も全然ある。ごはん食べるのがあまり好きじゃなくて」。昨年の緊急事態宣言中に一念発起し食べまくり、56キロまで増量したが「体調が悪くなった」とあっさり逆リバウンドした。ウエスト68センチでぶかぶかのズボンがトレードマーク。「既製品はほぼなくて、ユニクロの通販でウエスト70センチのズボンを買います」と笑った。それでいて、飛ばし屋。19年のドライバー平均飛距離は306・69ヤード。規定ラウンド数不足とはいえ、ランク4位に相当する。

19年の最終QTで10位となり、初めてツアーフル参戦の権利を得た。20年からのコロナ禍も「外国人選手が出場しにくくなった分、試合に出られるようになった」と大きな影響はない。現在、賞金ランクは76位。来季シード圏内65位以内へ、初優勝へ、絶好のチャンスが訪れた。