最終ラウンドは降雨によるコースコンディション不良のため中止となる中、古江彩佳(21=富士通)が通算12アンダーの132で首位に並んだ勝みなみ(23=明治安田生命)とのプレーオフ(3ホール実施)を制し、昨年と統合された今季4勝目、通算5勝目を挙げた。2ホール目にバーディーを奪い、19年のアマチュア時代に続く優勝。アマとプロで同一大会を制するのは宮里藍、畑岡奈紗以来、史上3人目の偉業となった。なお88年のツアー制度施行後、最終日が中止でプレーオフのみ実施されるのは史上5例目。

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いつもは冷静な古江が、力強く拳を握った。冷たい雨が降りしきるプレーオフ3ホール目、18番。入れば優勝の6メートルのパーパット。「ここで決めるしかないなと思って打ちました」。願いを込めて放ったボールは一直線にカップにおさまった。アマチュアだった19年に初優勝してプロ転向した大会で、ホステスプロとしても勝った。「喜んでもらえることが優勝だと思っていたので、それができてよかった」。万感の思いが言葉ににじんだ。

最終日は早朝から雨が降りしきる中で始まり、一度の中断を経てコース不良で中止となった。36ホールの短縮競技となり、中止発表から2時間15分後の午後1時から古江と勝によるプレーオフのみを行った。1ホールの繰り返しで実施する場合が多いが、今回は16、17、18番の3ホールでのストロークプレー。「驚きました。やるしかない」。同じ富士通所属の柏原明日架や同学年の盟友、西村優菜からも「頑張ってね」と激励を受け、気合を入れた。16番はともにパー。17番パー3でピン左2メートルにつけてバーディーとして1歩リード。18番では勝のパー以上が確定する中、しっかりとパーを取り、勝負を決めた。

復調を確信させる1勝になった。19年の初優勝から20年も3勝を挙げるなど、00年度生まれの「ミレニアム世代」のけん引役として活躍。しかし、今年はショットの不調などで未勝利と苦しんでいた。自信を取り戻したきっかけは今夏の欧州遠征だった。海外メジャー、エビアン選手権で4位、AIG全英女子オープンでは20位とともにに日本人最高成績を残した。「今年悪いわけではないと思いきれた大会になった」。ミスに敏感になりすぎていた面も反省し、「自信が持てた。ミスが出ても悔やまないようにした」と前向きになれた。昨年11月以来となった優勝スピーチでは「もう勝てないのかな、と思っていたりしたことを思い出しました」と涙をぬぐった。

これで西村と並んでいたプラチナ世代の通算勝利数も5に伸ばし、再び単独トップに。昨年の3勝も全て9~11月に挙げるなど、終盤戦では常に強さをみせてきた秋女でもある。「また1勝を目指して、楽しんでできればいいと思います」。この勢いを維持したまま、今季残り6戦を駆け抜ける。【松尾幸之介】

○…2週ぶりの優勝を目指した勝は、敗戦にも晴れやかだった。同じ海外志向の渋野、古江とのラウンドを心待ちにしていたがかなわず。雨中のプレーオフにも「この状況をとにかく楽しむしかない」。2ホール目の17番で古江にバーディーを奪われた。「諦めがつくというか、あの場面であそこにつけられるのはすごい」と素直に語った。最終日はわずか3ホールのみのプレーとなったが、18番でのショットや積極的にピンを狙ったアプローチには「成長を感じた」。充実感もにじませ、次戦以降のリベンジを誓った。

◆古江彩佳(ふるえ・あやか)2000年(平12)5月27日、兵庫県生まれ。3歳の時に母ひとみさんの社内コンペの練習に行き、ゴルフを始める。高校ゴルフの名門、兵庫・滝川二高に進学し、17年全日本大学・高校ゴルフ選手権優勝、18年トヨタジュニアゴルフW杯団体優勝など多くのタイトルを獲得。17、18年はジュニアの日本代表にも選出。同学年のゴルフ仲間からの呼び名は「えってぃー」。153センチ、53キロ。

【古江彩佳の使用クラブ】

▼1W=ブリヂストンスポーツ B1ドライバー(シャフト=フジクラ スピーダー569TR 長さ45・25インチ、硬さS、ロフト10・5度)▼FW=同 ツアーB JGR(3W=15度、7W21度)▼UT=同 ツアーB JGR(4U=23度、5U=25度)▼アイアン=同 ツアーB 18X-CB 6I~PW▼ウエッジ=同 ツアーB BRM(50、54、58度)▼パター=テーラーメイド スパイダーツアー▼ボール=ブリヂストンスポーツ ツアーB XS