今季断トツの9勝を挙げた稲見萌寧(22=都築電気)が、初の賞金女王に輝いた。

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国内で活躍したら米ツアーなど海外に目を向ける選手が多い。メジャーを制した渋野、賞金女王を争った古江は来月から米女子ツアー出場権を懸けた予選会に出場する。だが、初の賞金女王となった稲見に、その常識は当てはまらない。今の生活環境でのさまざまな要素が絶妙なバランスでかみ合い、好成績につながっていることが分かっているからだ。

海外へ行けば、幼少期から拠点とし、慣れ親しんできた千葉市内の北谷津ゴルフガーデンも離れることになる。キャディーとしても今季3勝をもたらした奥嶋誠昭コーチは男子で今季2勝の木下稜介ら多くの選手を抱えており、現地帯同は厳しい。左手親指のけんしょう炎の治療などで19年7月に契約を結んだ主治医、躍進の要因のひとつでもある今年から始めた筋力トレーニングを教わるトレーナーらに“チーム稲見”として海外へ帯同してもらうこともそれぞれに家庭があることなどから事実上、不可能だという。

持ち味のショットはこれらの要素で組み立て、こだわってきた再現性の高いスイングのたまもの。今季は多くのテレビ出演オファーも舞い込んだが、フォームが崩れることを嫌って断ったものもあった。今後もスポットで海外遠征に向かう可能性はあるが、稲見本人も「一番の目標は永久シード」と現状では国内残留に前向き。周囲のサポートを行う父・了さんも「もちろん今の環境をそのまま持っていけるなら検討します。でもなかなか難しいし、海外は甘くない」と話す。

現状では海外に本格進出はせず、国内ツアーで30勝以上の選手に与えられる永久シードを目指すことになりそうだ。【松尾幸之介】