渡辺彩香(28=大東建託)が、最終18番パー5で生涯初のバンカー内左打ちからパーをセーブ。通算10アンダーの206で黄アルムと首位で並び、開幕戦Vに王手をかけた。

黄とは一時7打差も、黄の失速と自身の17番パー4のイーグルなどで、13番からの5ホールで追いつき、最後に窮地をしのいだ。20-21年シーズンの開幕戦となったアース・モンダミンカップ以来のツアー5勝目は、目前だ。3打差3位に西村優菜、4打差4位に鈴木愛、稲見萌寧ら4人がいる。

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大変なことになった。最終18番パー5。渡辺の2オン狙いがグリーン左前バンカーにつかまった。ライが最悪だ。ボールはバンカー奥の壁まで約30センチ。ピン方向が狙えない。右打ちでスタンスもとれない。ウエッジを手に悩んでいると、川口淳キャディーが言った。

「パターで左打ちしかないよ」

パターは幸いピン型で、フェースの裏を使えた。左構えから、ないに等しいテークバックでバンカー中央へ、コツンと5ヤードほど飛ばした。ピンまで約20ヤードのバンカーショットは3メートルへ。パーパットをねじ込み、ガッツポーズが飛び出した。

「私は左打ちのイメージは全然なかったけど、グッチさん(川口キャディー)は、最初からそれしかないって感じで。ヒャ~って思ったけど、付き合いの長いキャディーさんだし」。ドキドキで挑んだ人生初の「バンカー内の左打ち」に成功。スーパー・パーは相棒のおかげだった。

ドラマの前に、猛反撃があった。同組の黄とは12番終了時で7打差もあった。絶望的展開に「何とかしなきゃ!」と思っていたら、黄が4ボギーと大失速。渡辺は17番パー4でショットイン・イーグルを決めた。フェアウエーから残り102ヤードを58度のウエッジで放り込む離れ業で、追いついていた。

20年6月アース・モンダミンカップ以来の優勝に挑む。当時は5シーズンも優勝から遠ざかり、18、19年はシードを逃すスランプだった。今は違う。「あの時は調子も悪かったし、優勝とか全然考えてなかったけど、明日は18ホール、優勝を意識して頑張ります」。昨年2月に結婚した元日本代表の柔道家・小林悠輔も大会がある。アベックVへ、意欲満々だ。【加藤裕一】

 

<一時は2位に7打差と独走したが、13番から4つ落として渡辺に首位に並ばれた黄アルム>

いいところで回ると1打1打に集中する。パターとかも体に力が入ったまま打つし、それで最後は体力が落ちた。(後半は)ショットが左右にブレた。うまく体力を分配できなかった。体力不足を感じているので、最終日は体力を温存しながら回りきりたい。