女子ゴルフの渋野日向子(23=サントリー)が目指す、日本人初のメジャー2勝目へ、最大の敵は“イソギンチャク”になりそうだ。今季のメジャー第2戦、全米女子オープン開幕を翌日に控えた1日、会場となるノースカロライナ州サザンパインズのパインニードルズGCで最終調整。練習ラウンドで、変則レイアウトとコースの1~8番を回った。コースの印象を問われると、開口一番「よく分からん、土の上にイソギンチャクが生えたみたいな、何あれ?」と、ワイヤグラスと呼ばれる、噴水のような形状で生える独特な茂みへの警戒心を口にした。

フェアウエーを外すと、至る所に点在した独特な茂みにのみ込まれるホールが多い。バンカーに入れても、脱出しただけでフェアウエーやグリーンまで運べなければ、その茂みに入れ、ボギー、ダブルボギーとたたきかねないトラップとなっている。「イソギンチャクにしか見えない」という茂みに入れてしまった場合の対処法は「無理して打って、空振りとかしたら(優勝争いからは)サヨナラ。そこはスパッと、アンプレするならアンプレするとか、やった方がいい」と語った。アンプレヤブルを宣言し、1打加えても、茂みから出す方を選んだ方が得策なこともあると考えるほど、やっかいな存在として映っている。

さらに、もう1つの警戒ポイントが「奈落の底」だ。極端に言えば、今回のコースはピラミッドのような形状のグリーンが多く、特にグリーン奥は下りの傾斜が鋭いホールばかり。グリーンに乗ったかと思っても、奥につければ下り傾斜で勢いに乗り、最悪は“イソギンチャク”に埋まってダブルボギー確定…。「グリーンの形状は傾斜がすごい。あの(グリーン奥の)奈落の底に落ちないように気を付けたい」と、こちらも独特の表現で、警戒心の高さをうかがわせた。

だからといって、何も対策を練っていないわけではない。この日までに計2・5ラウンド回り、細かく起伏などグリーンを確かめ、これまでほとんどやったことがない、パターを使ったアプローチなども新たな寄せ技に加えた。攻略法も「去年はめちゃめちゃ草ボーボーのラフで、曲げたら終わりみたいなラフだったけど、今回はマネジメントしがいがある。攻めるところは攻める。どれだけパーオンできるか」と力説。点で狙った場所を打ち続ける、ショット力を試される難コースを、楽しみにできるほどの自信が備わってきたことをうかがわせた。

今季のメジャー初戦、シェブロン選手権は、第2ラウンドを終えて単独首位に立つなど、メジャー2勝目が近いと予感させる4位だった。今大会は「世界で1番デカい試合。世界中の女子が集まる試合ですから。賞金も高いですし」と、押しも押されもせぬ最高峰という認識。優勝賞金180万ドル(約2億3400万円)は、女子ゴルフでは世界最高額だけに、優勝の場合の使い道については「UFOキャッチャー行きたいですね。何取ろうかな。お菓子ですね(笑い)」と話し、店ごと買い取ることができそうな賞金額でも、一般市民感覚をのぞかせた。

それでもメジャーならではの気持ちの高ぶりは「全然ないです(笑い)。やっぱり予選は通過したい強い気持ちはあります」と、まずは第1段階の目標を設定するなど、自然体で臨むこともできている。現在の状態も「悪くはないと思う」と、謙遜しながらも、狙い通りの調整ができた自信をのぞかせた。そして、再び自分に言い聞かせるように「イソギンチャクに入れない!」と力説。攻略法のイメージはできた。あとは4日間、脳内のイメージを再現できるかどうかの戦いとなる。(サザンパインズ=高田文太)