ステップアップツアー唯一の4日間大会で、ルーキーの宮沢美咲(20=フリー)がプロ初優勝を飾った。

首位と1打差2位スタートから5バーディー、ノーボギーの67をマークし、通算9アンダー、279。鮮やかに逆転し、後続に3打差をつけた。

19歳でツアーを制した川崎春花、尾関彩美悠(あみゆ)と同期合格の“21年11月組”の1人が、下部ツアー最高V賞金720万円を獲得。残り5戦で賞金ランク6位から、来季ツアー前半戦出場権を得られる同ランク2位に浮上した。

気がつけば勝っていた。

宮沢は「正直まだ実感がないです。最後のパットを決めて『優勝なのかな』と。同組の方に『おめでとう』と言われて」と不思議そうに笑った。

下部ツアー4度目の最終日最終組。苦手な1番パー4で第1打を右バンカーへ。何とか2オンできてホッとして、8メートルのバーディーパットが決まって「楽になった」という。5番では11メートルを沈めるバーディー。3打リードの最終18番パー5は第1打でフェアウエーをとらえたが、池越えの2オンは眼中になし。「3打差あったけど、やらかして“同点”になったら…。ノーボギーだったし」。レイアップして3オン2パットでまとめた。

真っ黒に日焼けして、ボーイッシュな2ブロックの髪形。「最近は“沖縄? 九州?”と聞かれる」という北海道千歳市生まれの道産子だ。同郷の同学年にツアーでメルセデスランク59位にいる内田ことこがいるが、ジュニアの実績ではかなわない。

昨年11月のプロテストに2度目の挑戦で合格した。1学年下でプロ同期の川崎が日本女子プロ選手権、尾関が住友生命レディース東海で優勝。桜井心那(ここな)は下部ツアー3勝で賞金ランク1位を独走している。「(尾関)彩美悠ちゃん、心那ちゃんとは(下部ツアーで)よく一緒に練習ラウンドしました。お父さんは『すごい人たちと一緒だったんだな』と言うし、心那ちゃんに『また練習ラウンド、お願いします』と言われたりして『私が回っていいのか?』と思ったりする」。そう言って笑った。

躍進する“21年11月組”に少し追いついた。

「みんな、毎日アンダーパーを出してスコアを伸ばす。私は今回、初日に伸ばしたけど、2日目73、3日目72。だから今日、5つ伸ばせたのはうれしい」。プロ転向後、ツアー2戦、下部ツアー11戦で4日間プレーしたのは初めてだった。「ジュニアでも4日間はなくて、体力が心配でしたけど、大丈夫でした」。

来季ツアー出場優先順位を決めるQTに最終から出場できる「下部ツアー賞金ランク10位以内」が目標だったが、下部ツアーVでその資格を取得。それどころか、下部ツアー最高の優勝賞金を得たことで、来季ツアー前半戦出場権が得られる「同2位以内」も視界に入った。「そうか。そうですね」-。ピンと来ない優勝に、心が追いつかない。無名のルーキーは知らぬ間に力をつけていた。【加藤裕一】