プロ8年目の蛭田みな美(26=ユアサ商事)が、劇的な初優勝を飾った。

初めて最終日に首位から出て、5バーディー、2ボギーの69と3つ伸ばし、通算13アンダー、203。18番パー5では、ウイニングパットを2度外してボギーとし、まさかのプレーオフ突入となった。18番でのプレーオフ1ホール目は第1、2打でミスしながら、第3打で自ら「奇跡」と評したスーパーショットでバーディー締め。97年度生まれの日本人では5年ぶり2人目の優勝を、3日間の大会コース記録で飾った。

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レギュラーツアーで初めて経験したウイニングパットは、3度目でようやく決めた。プレーオフ1ホール目。正規の18番で嫌なイメージが残るグリーンで、蛭田は1メートルのパットを決め、満面の笑みでガッツポーズをつくった。直後の優勝インタビューで、キャディーを務めた父宏さん(63)ら周囲の支えを問われると涙が止まらなくなった。表彰式でも「自分でも信じられなくて、今まで応援してくださった方々にお礼を言いたいです」と涙声で話し、大きな拍手に包まれた。

スーパーショットが土壇場で出た。4つ目のバーディーを奪った11番から、単独首位を守り続けて18番へ。「唯一、勝ちを意識した」という2メートルのバーディーパットはカップに蹴られた。50センチのパーパットもカップの縁を1回転して外し、何とか80センチのボギーパットを決めた。昨季3パット率は96位で最下位。この悪癖が初優勝を遠ざけてきた。プレーオフは第1、2打ともにミス。流れを失っていた。ところが深いラフから残り157ヤードの第3打を1メートルにピタリ。「(グリーンに)乗ればいいやと思っていた。奇跡です」。過去2度の最終日最終組で果たせなかった初優勝を飾った。

14年の日本女子アマ優勝など実績十分でプロとなったが、主な成績は18年の下部ツアー1勝だけだった。「自分はこのまま勝てずに終わるんじゃないか」。プロ8年目。毎年、そう思い続けてきたという。昨年までは「箸にも棒にもかからない」と、初優勝を遠く感じていた。ただ父宏さんは「昨年まではまだ勝ってはいけないレベル。今年は勝つ資格ができた」と、成長とこの日を予感していた。

昨年12月に元賞金女王のアン・ソンジュ(韓国)らを指導した穂苅敦トレーナーと契約し、ドライバー平均飛距離が10~15ヤードも増えた。またプレー中に笑顔を見せることは少なかったが「今年から笑うようにした。表情筋が緩むと全身が緩むと思って」。悪い流れの間も笑顔を見せ「奇跡」の一打につなげた。初のシード権獲得も「長かった。次はラッキーじゃない優勝をしたい」と年内の2勝目に意欲。優勝会見中、1度も絶えなかった笑顔が成長の証しだった。【高田文太】

<蛭田みな美(ひるた・みなみ)>

◆生まれ 1997年(平9)7月15日、福島県鮫川村生まれ。

◆サイズ 164センチ、57キロ。

◆競技歴 3歳からゴルフを始める。学法石川高では14年日本女子アマ優勝。15~17歳の部に出場した15年世界ジュニア選手権で3位、15年日本ジュニア選手権優勝。16年にプロテストに合格し、18年に下部ツアーの九州みらい建設グループ・レディースで優勝。

◆大自然育ち 出身の福島県鮫川村は現在も在住。幼少期は手づかみで魚を取っていた。「家の裏は牛の飼料を植えている草原。バスは辛うじて1日2本」。

◆猫好き 愛猫はラガマフィンの「くーにゃん」。

◆家族 父宏さんは訪問専門の獣医師だったが、蛭田がプロとなった8年前から休業しサポート。母智子さん、姉彩子さん(29)、兄玲於(れお)さん(28)。

 

◆蛭田が初優勝で達成した主な記録 西郷とともに正規の18ホールを終えての3日間通算13アンダー、203は大会コース記録。昨年大会でマークした岩井千怜に並んだ。また97年度生まれの日本人としては、永井花奈が17年10月に勝った樋口久子・三菱電機レディース以来、2人目で通算2勝目。1学年下の98年度生まれ「黄金世代」は、畑岡奈紗や渋野日向子、勝みなみら13人が優勝している。