日本オープン2勝、賞金王にも2度輝いた谷口徹(55=フリー)が開催コースに姿を見せ、“息子”の勝利を祝福した。

昨年の賞金ランキング3位でツアー未勝利の岩崎亜久竜が、石川遼の猛追を振り切り、ゴルファー日本一を決める大舞台で初優勝した。

谷口と岩崎は18番ホール脇で抱擁。岩崎の目から涙があふれた。岩崎は試合後の会見で「いつもトーナメントで気にとめてくれる。ラウンド中は緊張して苦しかったんですけど、谷口さんを見て『やっと終わった』と緊張が解き放たれた」と涙の理由を明かした。

昨年、2位が3度ありながら優勝に手が届かなかった岩崎に、谷口から声をかけた。何度も食事をともにし、今は岩崎から「パパ」と呼ばれる間柄になった。

「『ご飯に誘えなかった』って言うから見に来た。聞きゃええのに」(谷口)。「キャディーの湯本(開史)が谷口さんのことを『パパ』って言い出して。僕も冗談で」(岩崎)。お互い冗談を言い合える関係に信頼感の深さが見えた。

谷口は「悩みなんか聞かないよ。自分で感じて解決するしかないから。教えてもらって対応できるもんじゃないし」とそっけないが、岩崎はこう話す。

「僕は予選から集中しすぎて疲れちゃうところがあって。『優勝を意識するのは最後のハーフでいい』とか気持ちの持ち方を教えてもらいました」。

優勝争いの中で石川に猛追されても「意識したのは最後の3ホールくらい。優勝を意識せず、目の前の1打に集中して、自分にプレッシャーをかけずにうまくプレーできた」と日本オープンの舞台で“パパ”からの金言を生かした。

“息子”の勝利を見届けた“パパ”は「男子ツアーを見に来たのは初めて。応援は疲れるね」。言葉とは裏腹に足取りは軽快だった。