2歳の娘を育てながら昨年11月のプロテストに合格した異色のルーキー、神谷和奏(わかな、22=ソニーネットワークコミュニケーションズコネクト)が、3バーディー、1ダブルボギーの71で回り、1アンダーで19位と、プロデビュー初日で上々の成績を残した。「スタートする前から、けっこう緊張はあった。苦しい部分はあったけど楽しかった」と、笑顔を交えて充実感を漂わせた。

インスタートの出だし10番パー4は、パーでまとめた。ティーイングエリアには、コーチでキャディーも務める、夫幸宏さん(36)の知り合いが作製した「和奏」とプリントされたタオルを掲げる人が数人。雨が降る中、スタート前は夫婦で談笑する場面も見られた。ティーショットはフェアウエーに運び、第2打はピン左8ヤードのカラーへ。バーディートライの第3打は、雨で芝が重くなった影響もあり、パターで打って1メートル届かなかった。それでも落ち着いてパーパットを沈めた。

プロ最初のホールは大きなミスはなかったが、続く11番パー4で痛恨のダブルボギーをたたいた。ピンまで194ヤード、3番ユーティリティーで放った第2打がグリーン左のバンカーに入った。第3打は“ホームラン”で、グリーンを越え、反対側のラフまで飛んでいった。第4打でグリーンに乗せたが寄せきれず、4メートル残ったボギーパットを決められなかった。

それでも「やっちゃったという気持ちはあったけど、動揺はなかった」と、焦りは生まれなかったという。リーダーボードを見ても、上位はアウトスタートの選手ばかり。幸宏さんから「インコースの前半を耐えれば、アウトコースの後半で伸ばせる」と言われ、冷静さを保つことができた。むしろ神谷和も「18ホールあれば、絶対にバーディーチャンスは来る」と、自らに言い聞かせられるほど、前向きな気持ちになった。

前半の残り7ホールでパーを並べると、後半は3つのバーディーを奪った。1番パー5で、残り87ヤードからの第3打を3メートルにつけて最初のバーディー。さらに2番パー4は、4メートルのパットを決めて連続バーディーとした。5番パー4では、残り127ヤードからの第2打を1メートルにピタリとつけて難なく伸ばした。その後の4ホールはパーを並べ、アンダーパーで回りきった。

ホールアウト後、神谷和は「70点」と、やや厳しめの自己採点をつけた。「もったいないホールもあったので」。終わってみれば“もっとやれた”という思いさえ出ていた。幸宏さんは「70点はちょっと厳しい自己採点ですね」と笑いつつ「80点はあげていいと思います」と、合格点をつけた。

これまでアマチュア時代もプロツアーに出場した経験はなく、この日が正真正銘、初めて出場したプロの試合だった。「他の選手のいいプレーへの、拍手や歓声が遠くから聞こえてきて、すごく新鮮だった」と、プロゴルファーの一員と強く自宅。同じくプロで兄の羽藤勇司と一緒に「3時間かけて考えた」という、サインも、この日のホールアウト後、待っていたファンに初披露。出産後のプロテスト合格は、88年のツアー制施行後初という異色ルーキーの注目度は高く、1人1人丁寧に約30分、50人ほどのサインの求めに快く応じていた。大会前に目標に掲げていた、予選通過という目標が現実的となった。「まずは予選通過を目指して、そこから先は推薦していただいた方々のためにも、少しでも上に行きたい」。予選通過で獲得できる初の賞金で、2歳の長女、咲凜(えみり)ちゃんにプレゼントを贈るという目標が、近づいてきた。