夢は大きく世界一! 昨年11月に2度目の受検でプロテストに合格した入谷響(19=加賀電子)が、今季14戦目でルーキーとしても05年度生まれとしても、一番乗りとなる初優勝を飾った。首位で出て4バーディー、4ボギーの72で回り、通算12アンダー、204。スタート時点の2位との4打差を守って逃げ切った。早ければ来季にも、世界最高峰の米ツアーに挑戦したい意向。将来は米ツアーで女王になることが夢と語った。師匠で国内男子ツアー48勝の中嶋常幸も期待の大器がまずは実力を示した。

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苦しみ抜いたからこそ、念願の瞬間が訪れると放心状態になった。「やっと終わった」。50センチのウイニングパットを決めても、入谷にはガッツポーズはなかった。それがグリーン脇で待っていた、同じ新人や同学年の菅楓華、清本美波、中村心、都玲華に次々と祝福されると、ようやく緊張から解放された。「みんなとハグして、ようやく優勝の実感がわいた」。すでに実力も貫禄も備えていても、素顔は19歳の女子大生だ。

最高気温32度の暑さ、最大瞬間風速16・4メートルの強風という過酷な環境だった。首位で最終日に臨むのは2度目だが「すぐに喉が渇いた」というほどの緊張も、冷静さを失わせた。2番で早々とボギー先行。見ないと決めていたリーダーボードを、7番ティーショット前に見た。スタート時に4打あった2位との差は、2打に縮まっていた。その7番を落として1打差。アップアップの状態に陥った。

それでも起死回生の一打が“いける!”と、背中を押した。10番パー5、残り220ヤードから3番ウッドを強振すると1メートルにピタリ。6ホールぶりにバーディーとした。小学生時から900グラムのバットを毎日300回素振り。高校時代は多い日は1000球打ち込んで磨いた、飛距離と方向性を追求してきた1打が土壇場で出た。

師匠の中嶋の言葉に導かれてきた。初めて指導を受けた小5で言われた「ゴルフで1番大切なのはアドレス」が、今も最も印象的な言葉。「肩や腰などが目標に対し、どう向いているかを1番意識する」。基礎を大事にする中嶋の指導で、中学生のころにはプロを目指した。より練習できるよう岐阜・中京高は、全日制ではなく通信制を選択。そのころには中嶋も期待の存在に成長していた。

だからこそ高校3年時の最初のプロテストに1打足りず不合格となると、その日も、次の日も涙が止まらなかった。「ゴルフのことを考えたくもなかった」。そんな時も尊敬する中嶋の「切り替えてやっていくしかない」という言葉に救われ、立ち直った。師匠が期待するのは世界での活躍。入谷は「たくさん優勝を重ねて将来、米国で戦える選手になりたい。早ければ来年。米国で女王になることが最大の目標」と言い切った。米ツアーの年間女王は「世界一の選手」の称号。大志を抱く大器が、世界に名を響かせる未来は、遠くなさそうだ。【高田文太】