<女子ゴルフ:スタンレーレディス>◇初日◇15日◇静岡・東名CC(6500ヤード、パー72)◇賞金総額9000万円(優勝1620万円)

 有村智恵(23=日本ヒューレット・パッカード)が「3万年に1度」の奇跡を起こした。8番パー5で、残り190ヤードの第2打を直接カップイン。日本女子ツアーでは史上初の2度目のアルバトロスで勢いに乗ると、16番パー3ではホールインワンを決めた。同時達成は過去10年の女子ツアーの統計上では「約1000万ラウンドに1度」で、毎日1ラウンドしても「約3万年に1度」。国内ツアーでは男女通じて初の快挙で、7アンダー65を出し、単独首位に立った。

 恐怖心が先立った。8番パー5のアルバトロスに続く、16番パー3でのホールインワン。有村はティーグラウンドでカップインを見届けると「どうしよう。怖い」と、小田亨キャディー(36)につぶやいた。「怖いとしか言葉が出なかった。こんな1日で運を使って…。帰りは注意しないと」。「3万年に1度」の奇跡を素直に喜べなかった。

 8番パー5で「有村劇場」の幕が開いた。フェアウエーから残り190ヤードの第2打。3番ユーティリティーを振り抜く。左足下がりの傾斜。インパクト時は会心の当たりではない。トップ気味で弾道は低く出たが、逆に奏功した。「しっかり当たっていれば、強すぎた。薄めに当たってよかった」と球はピン前5メートルに落ちると、そのままカップに沈んだ。

 日本女子ツアーでは初の2度目のアルバトロス。確率の高いホールインワンが1度もなかっただけに「こんな人はいないよね。ホールインワンができればいいけど」と周囲にこぼした。そんな願望は約2時間後に現実になる。16番パー3。8番アイアンで放った球は直接カップに入った。

 「3万年に1度」の奇跡は強運だけではない。先月のメジャー全米女子プロ選手権で予選落ち。普通なら会場を去るが、悔しさを胸にしまって「自分に何が足りないのか」と最終日最終組を見て回った。大会後も帰国せず、米フロリダで1週間の合宿を敢行。スイング時に体が開き、左肩が浮く悪癖を見いだした。「良いところ、悪いところが明確になった」。

 女子サッカーのなでしこジャパンの活躍も刺激にした。沢穂希(32)とは2度の食事で、その苦労と努力を知る。海外勢との体のハンディを乗り越えたこと、東日本大震災の起こった特別な年に、スポーツを通して勇気を与えたことに心から感銘した。「プロとして結果を出したい」との強い思いも、この日の快挙につながった。

 アルバトロスなど、この日だけで80万円を稼いだ。同組の表純子(37)からは「ビール、ビール」と「ごちそう」を求められた。「こういう時は周りにお返しをすれば、また自分に運が回ってくる」と夜は自らスポンサーとなり、ホテルで宴会を開いた。「最終日も笑って、おいしいご飯を食べられるように気持ちを切り替えたい」。「3万年に1度」の奇跡で、運を使い果たすつもりはない。【田口潤】