<男子ゴルフ:VanaH杯KBCオーガスタ>◇第1日◇29日◇福岡・芥屋GC(7150ヤード、パー72)◇賞金総額1億1000万円(優勝2200万円)

 18歳の新鋭が首位発進した。プロ3年目の稲森佑貴(グリーンゴルフ練習場)は6バーディー、1ボギーの67。生涯獲得賞金0円のノーシード、ツアー出場3戦目にしてあっと驚くロケットスタートだ。石川遼に憧れて、鹿児島城西高2年だった11年に16歳でプロ転向。将来の夢に海外メジャー4大会制覇を掲げる新星が大金星を狙う。

 とことん強気だった。後半7番パー4。稲森は2段グリーン下段から10メートル、上段に切られたカップに対し、バーディーパットを2メートルもオーバーさせ、返しを決めた。続く8番パー3は第1打をグリーン左前バンカーに打ち込んだが、2メートルのパーパットをカップの向こう側にガツンとぶち当て、放り込んだ。

 「今日はプライベート感覚。あまり『試合』と思わず、自分に圧力をかけないようにした」。高麗グリーン特有の強烈な芝目をねじ伏せる勢いで、ツアー自己ベストの67。18歳のプロは堂々と首位に立った。

 身長は169センチ。ドライバーの飛距離は270~280ヤードほど。パワーも技術も発展途上の18歳の最大の武器は、驚くほど単純で強い心だ。6歳でゴルフを始めた当時の夢は「ゴルフ場のメンバー」。メンバー=会員権を購入した人という意味も知らず、うまくなれば、なれると信じた。1年後に目標を「プロ」に修正。中学卒業を前に、年齢制限の16歳になる高校2年での日本プロゴルフ協会(PGA)資格認定プロテスト受験を決めた。「(16歳でプロになった)石川遼さんの影響です。どうせプロを目指すのだから、早い方が自分のためになると思った」と“高校生プロ”を選んだ理由を説明した。

 世界で戦う石川、松山英樹も届かぬ存在とは思っていない。「同じ人間なんで不可能じゃないでしょ?

 石川さんも松山さんもできるなら、僕もやってやるんだ、と思っています」。夢も今ではグレードアップした。「まず海外メジャーに出ること。欲を言えば、最終的にはグランドスラム(メジャー4大会制覇)」-。プロ3年目、ツアー出場3戦目、生涯獲得賞金0円の18歳と思えぬ“語録”がスラスラ口をつく。

 ツアー初の予選通過を懸けた第2日は通過点だ。「優勝を目指します。予選通過どうこうじゃなく、肩の力を抜いてプレーしたいです」。稲森は当然のように、上だけを見ている。【加藤裕一】

 ◆稲森佑貴(いなもり・ゆうき)1994年(平6)10月2日、鹿児島県生まれ。ゴルフは6歳から。10年日本アマでベスト32。鹿児島城西高1年だった11年3月にプロ転向を宣言、同年の日本プロゴルフ協会(PGA)資格認定プロテストで、85年の同プロテスト東西統合以降最年少となる「16歳11カ月22日」で合格。師匠は父兼隆さん。169センチ、68キロ。