<米男子ゴルフ:メモリアル・トーナメント>◇最終日◇1日◇オハイオ州ダブリン、ミュアフィールドビレッジGC(パー72)

 男子ゴルフの松山英樹(22=LEXUS)が米ツアー26戦目にして、初勝利を挙げた。通算13アンダー275で、首位に並ぶケビン・ナ(米国)とのプレーオフに進出。愛用のドライバーが折れるハプニングを乗り越え、1ホール目で勝利した。日本人の優勝は08年5月の今田竜二以来4人目で、22歳は最年少記録。この勝利で米ツアーの2年間シード権と、来年のマスターズ出場権も獲得し、世界ランクも自己最高の13位まで上がった。

 プレーオフ1ホール目、松山は3メートルのパーパットを沈めて優勝を決めると、両手を突き上げて喜びを爆発させた。「パットを入れることに集中していたので、入った瞬間は何も思い浮かばなかった」。出色の勝負強さは、米初Vが懸かる場面でも変わらなかった。

 終盤の試練を乗り越えた。15番のバーディーで単独首位に。しかし続く16番パー3で池に落としてダブルボギーとすると、続く17番でもボギーをたたき、首位から陥落した。さらに18番パー4では、やや右に出た第1打に落胆し、カクッと脱力してヘッドを地面に落とした瞬間、クラブがティーマークに当たってシャフトが折れた。

 それでも残り175ヤードの第2打を、7番アイアンのドローでピン右1・5メートルにピタリ。大会史上初めて、最難関18番での4日連続バーディーで、ケビン・ナとのプレーオフに持ち込んだ。18番での1ホール目は、3番ウッドでナのドライバー相当の距離を稼いだ。これを見たナは、ドライバーで左の小川に打ち込んだ。勝負は決した。

 3月に大学を卒業した22歳。在学中の昨季、プロ1年目で国内ツアー賞金王に輝くと、米ツアーの賞金シードも獲得し、すぐに渡米。そして8カ月目で優勝。米ツアー3勝を挙げた丸山茂樹でさえ、初優勝はプロ9年目、31歳だった。

 歴史を変えるスピード優勝だが、松山はあせっていた。アマ時代以来、2年ぶりとなった4月のマスターズを前に「こっちでまだ勝ててないんだよな。こんなに試合に出ているのに」とつぶやいた。米ツアーを初めて転戦しながら「勝てる体をつくらないと」と試合中も走り込みや長時間の練習を欠かさない。アイアンショットは、すでにツアートップレベル。今大会も「ピンを狙ったショットの精度」が、4日間平均25フィート8インチ(約7・8メートル)で全体1位だった。

 昨年末からの左手首のケガで足踏みしたが、それがほぼ完治した今、松山の勢いを阻むものはない。“準メジャー”とも称される選手層の厚い一戦で、世界ランク1位のスコットやマスターズ2勝のB・ワトソンらとの優勝争いを制した初優勝は、価値がある。そんな快挙にも「明日から次の優勝に向けて頑張る」と再来週の次戦、海外メジャーの全米オープン選手権に気持ちを向けた。公言する目標は海外メジャー4大会全制覇。松山なら決して不可能ではないと、この勝利で世界に印象づけた。

 ◆日本男子の米ツアー初優勝

 青木功はニクラウスとの死闘で2位となった80年全米オープンから3年後のハワイアンOPで。最終18番パー5のチップインイーグルで逆転しての劇的勝利だった。丸山茂樹は参戦2年目のミルウォーキーOP、C・ハウエルとのプレーオフ(PO)を制し、その後も2勝。今田は08年AT&TクラシックでK・ペリーにPOで勝利、前年大会ではZ・ジョンソンにPO負けし、リベンジを果たした。