<高校ラグビー:平工15-12和歌山工>◇28日◇1回戦◇花園

 4年ぶり13度目の出場となる平工(福島)が和歌山工を破り、出場4大会連続の初戦突破だ。前半に10-0とリードを広げ、後半はSO渡辺彰平主将(3年)を中心に相手の反撃をしのいだ。

 ノーサイドの笛と同時に、平工フィフティーンは抱き合って喜んだ。07年度大会の初戦では60-0で圧勝した相手に前半を10-0で折り返すが、後半は防戦一方。同18分にトライを許して3点差に迫られると、24分にもモールで残り1メートルまで押し込まれる。相手の反則にも救われてリードを守りきった。高木邦夫監督(46)は「きつい試合で、残り時間を考えて勝てたことは財産になる」と選手たちの踏ん張りをたたえた。

 苦しみに耐えてきた主将が、抜群の存在感を見せた。雨の影響でボールが滑り、ミスが続出。点差が縮まって冷静さを失いかけた仲間を「強気で前に出よう」と鼓舞した。SOとしても、奪ったボールは確実につなぎ、相手が迫ってくれば大きく蹴り出して時間を使った。

 いわき市内の自宅は、震災による津波で床下まで浸水。復旧まで1カ月以上も帰れなかった。それでも目指し続けた花園で、負けるわけにはいかなかった。監督が「敵だったら一番嫌なのは(渡辺)彰平」と信頼を寄せる司令塔は、前半に接触プレーで強打した腰の痛みをこらえながら勝利に貢献。「前半でみんな気持ちが落ち着きすぎてしまったけど、勝ててホッとした」と汗をぬぐった。

 卒業後は就職が決まっており、敗れれば高校から始めたラグビーに別れを告げる。2回戦(30日)の相手はBシードの強豪・報徳学園(兵庫)。「次が本当の目指してきたところ。歴史を塗り替えて、正月を迎えたい」。兄淳平さん(20)も果たせなかった、平工初の3回戦進出を誓った。【鹿野雄太】