<全国高校ラグビー:桐蔭学園62-7東海大翔洋>◇30日◇2回戦◇花園

 9度目の花園は完敗で幕を閉じた。東海大翔洋(静岡)が桐蔭学園(神奈川)に敗れ、県勢初のシード校撃破はならなかった。試合開始から個人技、連係ともに差を見せつけられ、前半2分に先制されるなど合計10トライを喫した。それでも、後半にはCTB仁科翔一朗主将(3年)がトライ。県内3冠を達成し、4年ぶりの聖地へけん引してきたチームの要が、気迫あふれるプレーで一矢報いた。

 48点差をつけられた後半17分、仁科が桐蔭学園のキックに飛び込んだ。はじいたボールが前へ転がる。蹴ってインゴールへ運び、並走する相手より1歩速くトライを決めた。13分前にも同じような形で逃したチャンス。2度目はきっちりと仕留めた。「がむしゃらに追い掛けた。自分はうまくないし、気持ちだけだった」。翔洋の復活イヤーを支えた精神力を花園でも示した。

 無念のノーサイドを迎えると、泣きじゃくった。負けたから、だけではない。「悔いが残らないと言ったらうそになるけど、最高の仲間と(ラグビーが)できてうれしくてうれしくて…」「練習を嫌々やったこともあるけど、今は少し寂しい」。3年間の終着点で、さまざまな感情があふれ出た。

 試合内容としては完敗だった。降りしきる雨に持ち味の展開ラグビーを封じられたが、本多茂監督(55)は「雨は関係ない。何もさせてもらえなかった」と実力差のみを敗因とした。開始早々に失点すると、接点への寄りの速さなどで終始押し込まれる。翔洋がボールを滑らせ、一気にトライまで持ち込まれるシーンもあった。体格、集中力、組織力。どこを取っても差を見せつけられた。仁科も「情けない試合だった」と、内容自体には厳しい自己評価を下した。

 それでも、この1年間の実績が色あせることにはならない。高校入学以来、県制覇を経験することなく迎えた最終学年で、新人大会、総体、全国ラグビーと3タイトルすべてを取り戻した。今大会でも28日の1回戦では古豪大分舞鶴に逆転勝ち。高校ラグビー界に驚きを与えた。

 常勝軍団復活への確かな礎を築いた3年生には、大学でラグビーを続ける者もいる。その1人で東海大に進む仁科は「この試合で教わったことをひたむきにやっていきたい」。敗戦を糧に成長してきた男は、今回の一戦もきっと自身の力に変える。【石原正二郎】