20年東京五輪追加種目となった空手の男子組手84キロ超級で、香川幸允(ひでよし、29=テアトルアカデミー)が初出場で初優勝した。決勝で世界王者サジャド(イラン)に逆転勝ち。同大会の空手の最重量級を制したのは、日本勢男子初の快挙だった。

 世界選手権では入賞すらない29歳の遅咲き男が、長年日本が後塵(こうじん)を拝してきた最重量級の頂点に立った。昨年の世界選手権王者サジャドとの決勝は、残り2分から突き技でポイントを連取して、逆転勝利。192センチ、115キロの大器は「やっとやっと取れた」と達成感に浸った。優勝の瞬間は感情を爆発させる外国選手が目立つ中、静かに喜びをかみしめた。「相撲の横綱と一緒。空手は(敗者に敬意を払う)武道だから」と言った。

 父は世界空手連盟の技術委員の政夫さん。中学まではバスケットボールに打ち込み、競技開始は学法福島高に入学後の15歳と遅かった。帝京大を卒業し、現在は主に午前中に練習し、夕方からは人気子役の鈴木福(13)谷花音(13)らが所属するテアトルアカデミーの芸能部で働く。エキストラの依頼やオーディションの情報を社内に伝達するなどの業務をこなす。

 世界選手権は5階級だが、東京五輪は組手3階級となる。体重区分は未定だが、男子84キロ級の世界王者・荒賀龍太郎(26)と枠を争う可能性が高い。それでも「空手人生を懸けて東京五輪に臨む。チャンピオンとしての誇りを持って活躍したい」と力強く話した。