世界28位の錦織圭(28=日清食品)が、ウィンブルドン10度目の挑戦で自身初のベスト8入りだ。今日11日(日本時間同午後9時開始)の準々決勝で元世界王者のジョコビッチ(セルビア)とセンターコート第1試合で対戦する。亜大テニス部総監督の堀内昌一氏が今大会の錦織を分析する。

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 錦織はこれまでの4試合でジョコビッチと戦う準備を十分に整えたと思う。テニスはエースが20%でミスが80%のスポーツだ。陸上や水泳などと違って、相手に左右される部分が非常に大きい。たとえミスをしても正しい判断に基づいたものなら、相手に重圧を与えられるし、次につなげられる。錦織はそんなプレーができている。

 ガルビス戦の勝敗は第2セットで決まった。第3、5、7のサービスゲームをポイントを先行されながらキープ。特に3、7ゲームはブレークポイントを許しながらの逆転だった。一方で相手の6度のサービスゲームで奪ったポイントはわずか4つ。劣勢に見えるが、これが錦織が描いたストーリーだった。

 相手のプレーへの反応が正確だ。自分のショット選択にも間違いはない。第1セットを失ったのは相手のプレーが上回っただけ。粘り、耐えていけば必ず勝機が訪れる-。そして、錦織の狙い通りに試合は進んだ。タイブレークをものにできたのはガルビスにストレスを与え続けていたから。ブレークもなく、獲得ポイントで劣っても優位に立った。

 今大会の錦織はサーブを筆頭にすべてのショットに安定感がある。判断ミスも見当たらず、プレーの精度も尻上がりだ。ジョコビッチとは激しいバックハンドの打ち合いになる。クロスの応酬からどのタイミングでストレートに打ち抜くか。ここでの判断力が勝負を分けるだろう。今年のジョコビッチはメンタル面に波があり、強引で無理なショットを打つ傾向がある。ドロップショットを多用してきたら、錦織にチャンスが広がる気がする。(亜大教授、テニス部総監督)