鬼の形相で、セリーナ・ウィリアムズ(米国)が主審にくってかかった。人さし指を主審につきたて、何度も「わたしから得点を奪った。わたしに謝れ」と、ののしった。決定的なひと言が飛び出したのが、第2セット、大坂が4-3とリードしたチェンジコートの時だった。

セリーナは「この盗人」と吐き捨てた。これに「言葉の乱用」を適用され、この試合3度目の警告。規則で自動的にセリーナは決定的な1ゲームを失い、会場が騒然とした。セリーナは涙で、大会レフェリーに訴えた。2万人を超える観客全員が、主審にブーイングを浴びせ始めた。

きっかけは、第2セットの第2ゲームだった。大坂のサーブで40-15の時に、セリーナはコーチから指導を受けたとして「コーチング」の違反で最初の警告を科された。第5ゲームでブレークバックされると、ラケットをたたき折り「ラケットの乱用」で2度目の警告。1ポイントを失っていた。

表彰式では、主審や主催の全米テニス協会の役員に向けたブーイングが止まらず。さすがにセリーナも、大坂を気遣い「彼女は立派なチャンピオン。これ以上のブーイングはやめて」と懇願した。

しかし、試合後の会見では「わたしはやましいことは1度もしていない」と、コーチングを否定。しかし、大会を放送している地元テレビ局の質問に対し、セリーナのコーチは、コーチングを認めたという。

大坂は、ただ巻き込まれただけで、全く非はない。また、大坂の優勝が色あせることもない。しかし、4大大会初の日本人優勝は、セリーナと主審との口論で、後味の悪いものになった。

◆警告VTR 第2ゲームで観客席にいるコーチから、試合中に禁じられた助言を受けたとして警告1回目。第5ゲームでブレークバックを許すとラケットを壊して2度目となり、大坂に1ポイントが与えられた。第7ゲームで再びブレークを許すと審判への暴言で3度目。次の第8ゲームは戦うことなく大坂に与えられた。3-5となり、勝負はほぼ決まった。

◆テニスの警告 4大大会ではテニス規則に準じ、4大大会行動規範として、第3章の「選手の違反」に、S項としてペナルティーの段階を規定している。1回目の違反が「警告」。2回目の違反で「ポイント・ペナルティー(1ポイントを失う)」、3回目の違反で「ゲーム・ペナルティー(1ゲームを失う)」となる。違反には、今回の「ラケットの乱用」「言葉の乱用」以外にも「スポーツマンらしくない行動」などがある。