世界1位の大坂なおみ(21=日清食品)が同年代対決に屈した。同23位のベリンダ・ベンチッチ(スイス)に3-6、1-6で敗れ、2連覇を逃した。試合前に、世界1位を争っていた現在2位のハレプ(ルーマニア)が敗退。次週の大坂の世界1位死守は確定した。ただ、女王になった今、相手は徹底的に研究してくる。

この日のベンチッチの戦い方で、大坂の課題が再びあぶり出された。今大会のように、大坂と打ち合えるパワーを持つことが前提になるが、課題は3つほどあるだろう。

課題(1) 大坂は典型的な先手必勝型だ。第1セットを奪った時は69連勝中。約2年間、負けていない。逆に考えれば、打倒大坂には第1セットが大きな鍵を握る。この日のベンチッチは最初からエンジン全開で向かってきた。第1セットを奪うことで、大坂の勢いをそぐ展開にし、それが成功した。大坂は、早い回戦での第1セット、いろんなことを試す傾向がある。しかし、これからは危険だ。最初からしっかりと集中し、第1セットを奪うことに全力を傾ける必要があるだろう。

課題(2) 全米、全豪を制した大坂の持ち味は、強打がミスなく続けて入ることにある。直線的な強打は、入れば圧倒的な威力を持つが、縦回転があまりかかっておらず、弾道が低い。ネットの高さぎりぎりに飛ぶため、ネットしたりアウトしたりするリスクも大きい。それをミスなく打ち続けるには、相当な体幹と集中力が必要だ。ベンチッチは、大坂の強打に負けないパワーで受け止めたが、決して無理をせず、縦回転の球で深く安全に返球。無理をする大坂のミスを引き出した。それに対抗するには、縦回転をかける安定したショットを学ぶことが必要だ。この日の試合でもジェンキンス・コーチが「もう少し高い弾道で」とアドバイスしたが、そのようなショットをほとんど打ったことがない大坂は、逆に戸惑うばかりだった。

課題(3) 最後は、第2サーブだ。第1サーブが強烈なことは誰もが認めるが、第2サーブになると極端に速度、コントロールともに落ちる。この日の試合でもベンチッチは、その弱点を狙い、リターンで圧力をかけてきた。第2サーブを磨くとともに、第1サーブを工夫すれば、もっと簡単にポイントを取れる展開になる。最近は時折見せているが、第1サーブで横回転のスライス、バウンドしてから跳ねるキックサーブを交ぜたりすることで、相手はリターンのポイントが絞りづらくなる。第1サーブを強打すれば、入った時の威力はあるが、確率は低くなる傾向にある。第1サーブを多くの球種で入れることで、無理をしなくても安定してポイントが取れるようになるはずだ。そうすれば第2サーブへの負担も減る。

これだけの課題がありながら、全米、全豪に優勝し、世界1位にいる。つまり、これを改善できれば、無敵の女王が完成する。【吉松忠弘】