19年世界選手権ボルダリング銀メダルで20年東京五輪での現役引退を表明している野口啓代(30=TEAM au)が日本勢最上位の2位に入り、東京五輪代表に内定した。8人で行われた決勝で野中生萌(XFLAG)は5位、森秋彩(茨城県連盟)は6位、伊藤ふたば(TEAM au)は7位だった。同男子ボルダリング金メダルの楢崎智亜(TEAM au)ら4人が出場する男子決勝は21日に行われる。

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野口は9度目の世界選手権で、初の五輪切符をつかむと感極まった。「夢みたいで信じられない。ボルダリングで急に集中出来て、今シーズンで一番良い登りだった。(3種目で)積み上げてきた自信になった」。勝負カラーの赤のリボンとネイルを施し、スピードで7位と出遅れると、得意のボルダリングで巻き返し、総合2位で五輪代表に内定した。

ここ1年半は「心の準備」に重点を置いた。昨年1月からメンタルコーチの東篤志氏(37)から指導を受け、自身と向き合うための“自分会議”と呼ぶ時間をつくった。

その時の状態に応じてのアドバイスをもらうのではなく「なぜ、何のために五輪に出たいの?」「ここまで何を大事にクライミングをしてきたの?」などの質問形式での会話を進めた。改めて原点回帰することで、日々のモチベーションや試合までのピーキングの整えにつなげた。未経験の五輪に関しては「分からない」からこそ、慎重に自問自答して深掘りした。大舞台こそ「心技体」の「心」を整えることが重要と考え、試合中の想定外のことにも対応出来る強いメンタルを養ってきた。

東京五輪での現役引退を表明し、今大会が「最後の世界選手権」となった。左足靱帯(じんたい)損傷の大けがなどで引退を考えた時期もあったが、16年8月にスポーツクライミングが東京五輪の新競技に決まったことで「五輪金メダル」が夢となった。苦難を乗り越える大きな原動力となり、その夢に向かって3年間目の前の壁を登り続けた。

約1800人が来場したこの日の会場の大型画面には、顔写真とともに直筆の「集大成」の文字が紹介された。夢のゴールまで1年-。日本女子の第一人者が、20年間の競技人生を懸けた大勝負に向け、最後のラストスパートに入る。【峯岸佑樹】

◆野口啓代(のぐち・あきよ)1989年(平元)5月30日、茨城・龍ケ崎市生まれ。茨城・東洋大牛久高卒。小5で競技を始め、小6で全日本ユース選手権優勝。08年ボルダリングW杯モンタウバン大会(フランス)でW杯日本女子初優勝。09、10、14、15年と4度ボルダリングW杯年間総合優勝。18年世界選手権同種目2位。趣味はネイル。165センチ。