男子100キロ超級で、16年リオデジャネイロ五輪銀メダルの原沢久喜(27=百五銀行)が銀メダルを獲得した。決勝で、同五輪100キロ級覇者のクルパレク(チェコ)に延長の末、指導3による反則負けを喫した。日本勢で03年大会の棟田康幸以来の100キロ超級制覇はならなかった。

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原沢は悲願にあと1歩及ばなかった。強豪クルパレクとの決勝は、死闘となった。序盤は内股、小内刈りの連続攻撃で攻めたが、相手の裏投げに頭から畳に落下。「影響ない」と、しながらも動きが鈍くなった。7分50秒。3つ目の指導を受けて勝負あり。準決勝で前大会覇者のトゥシシビリから合わせ技一本を奪って観客約3600人から大拍手を浴び、決勝が「最大の見せ場」だっただけに敗戦が悔やまれた。

原沢 (五輪2連覇で絶対王者の)リネール選手がいなかったのでどうしても勝たないといけない試合だった。地力、総合力が足りない。悔しいの一言。

リオ五輪以降、不調に悩まされた。心身疲労が積み重なる「オーバートレーニング症候群」の影響で、17年大会は初戦敗退。敗戦続きで、リオの輝きは薄れつつあった。18年4月の全日本選手権を最後に日本中央競馬会を退職し、フリーの道を選んだ。突き動かしたのはリネールとのリオ五輪決勝の記憶だ。「普通では勝てない。孤独となって見える世界があるはず」。

今年1月が転機となった。天理大に出稽古へ行き、元世界王者の穴井隆将監督に得意の内股に入るまでの足技やフェイントの指導を受けた。「内股の感覚が変わった」。2月の欧州でのグランドスラム連戦では鋭い内股が復活し、3年ぶりの国際大会優勝も飾った。

20年東京五輪は、集大成とする。最重量級再建のため過去の栄光は忘れる-。リオ五輪の銀メダルは母校の山口・早鞆高に発送して、手元に置かない。「この1年に柔道人生の全てを懸ける。また日本武道館に戻ってくる」。27歳の柔道家が、2度目の大舞台へ向かう。【峯岸佑樹】