2連覇を狙った明大の田中澄憲監督(44)は、伝統の一戦を国立競技場で行えたことに感謝の言葉を口にした。前回の国立での直接対決は、自身がSHとして明大を優勝に導いた96年大会だった。

試合後、44歳の指揮官は「約5万7000人が集まった最高の舞台で、試合ができたことを誇りに思う。早稲田さん、そして支えてくれた全ての方に感謝したい。明治も意地を見せたが、前半の結果(0-31)がこの結果につながった」と振り返った。

昨季、就任1目で明大を復活Vに導いた。前監督の丹羽政彦氏に依頼され、監督に就任。それまでサントリーで新卒採用を担当し、指導者のお手本はエディー・ジョーンズ氏らサントリーの歴代指揮官だった。有望選手が集まりながらも結果を残せず、「人材の墓場」とやゆされた時代もあった。サントリー流派と経験に基づいた独自の考えを織り交ぜた指導で、母校を再建した。「明治は自由で個人主義という空気があり、それを『戦う集団』にしたかった」。私生活も見直し、清掃やあいさつなど「学生として当たり前のこと」ができるよう口酸っぱく言った。

黄金期を築いた故北島忠治監督の遺訓「前へ」を大切にするが、一方で「それ以上に『明治は強くないといけない』。そのために、どう行動するかが大事。その姿を後輩たちが受け継ぐことが大切だと思う」と話す。毎春、新1年生の入寮式で、OBが「前へ」の意義や歴史を伝える“前へ講義”を行うが、OBに時短を依頼するほどで普段の生活から成長を求める。

今季のスローガンは「真価」だった。チームの進化も懸けたもので、田中監督は言う。「負けた時が一番大事。決勝まで良い準備はできたが、勝てないのは何かがあったから。そこをしっかり分析して、次へつなげたい」。