【仁川(韓国)4日=木下淳】フィギュアスケート男子の羽生結弦(25=ANA)が韓国入りした。3年ぶりに出場する4大陸選手権(6日開幕)に向けて、拠点のカナダ・トロントから仁川国際空港へ到着。

新型コロナウイルスによる肺炎なども警戒してか、マスク姿で現れた。当地は66年ぶりの冬季オリンピック(五輪)2連覇を達成した18年ピョンチャン(平昌)大会以来、約2年ぶりとなった。

主要国際大会で唯一、手にしていない今大会の初優勝を狙う羽生は、ショートプログラム(SP)とフリーともに平昌大会で使用したプログラムに戻す。SPはショパンの「バラード第1番」、フリーは映画「陰陽師(おんみょうじ)」の曲を流しての「SEIMEI」に回帰する。

理由について初めて口を開き「プログラムはバイオ(グラフィー)で(1日に)発表されちゃったのが、ちょっとビックリしたんですけど、SEIMEIとバラード第1番をやる予定です。理由としては、いろいろ言いたいことは多々あって今、パッと言えないんですけど、とにかく自分自身が一番、自分が目指しているフィギュアスケートとして、できるものが、今はSEIMEIとバラード第1番が1番かなと思ったので」と説明した。

さらに「そのプログラムたちと一緒にまた滑りたいな、と心から思えたので。ま、その理由もいろいろあるんですけど、また後で詳しく話しますけれども、とりあえず自分らしく滑れるプログラムかなと思って、やります。ありがとうございます。またお願いします」と話して迎えの車へ向かった。

バラード第1番は通算4季目、SEIMEI同3季目。平昌後はSPがジョニー・ウィアー氏(米国)の「秋によせて」、フリーがエフゲニー・プルシェンコ氏(ロシア)の演目をアレンジした「Origin」を2季連続で滑ってきた。しかし、憧れの選手に尊敬の念を込めて取り入れてきたものの、昨季の世界選手権や今季のグランプリ(GP)ファイナル、全日本選手権で、いずれも2位と優勝を逃してきたのも事実だった。

敗れたネーサン・チェン(米国)や宇野昌磨(トヨタ自動車)と争う今年3月の世界選手権(カナダ・モントリオール)に向けて、勝利を追い求めた変更。前日3日に到着したジャンプ担当のジスラン・ブリアン・コーチが「世界選手権で勝つためのベストのプログラムを探った。話し合ったわけではなく彼が自分で決めた。誰かへの尊敬ではなく、結弦が結弦であるためには内から、あふれ出てくるものが必要だった」と理由を代弁していた。

さらにこの日、国際スケート連盟(ISU)の公式サイトでプログラムの構成予定が発表された。原点回帰に伴い、これまでと大きく変わった。SPは冒頭の4回転サルコーから、4回転-3回転の連続トーループ。最後のジャンプにトリプルアクセル(3回転半)を用意した。

フリーは4回転ルッツからスタートし、4回転サルコー、3回転半、3回転フリップを予定。後半は4回転-3回転のトーループ、4回転トーループ-1回転オイラー3回転サルコーとコンビネーションジャンプを続け、最後に3回転半-2回転トーループを組み入れた。

投入に向けて練習を重ねていた前人未到のクワッドアクセル(4回転半)は回避したが、平昌五輪では右足首の負傷明けで跳べなかった4回転ルッツをフリーに組み込み、五輪2連覇プログラムを進化させた。くしくも、同じ韓国。五輪、世界選手権、グランプリファイナルに続く主要国際大会の完全制覇もかかる4大陸選手権。世界王座を奪還するための戦いが始まる。