全国2連覇、関西6連覇を目指す天理大で、SO筒口允之(1年=長崎南山)がひときわ目立った。

前半はチームとしてチャンスを仕留めきれず、先制点がなかなか奪えない。39分、FWがスクラムで前進すると、ボールを受けて、右大外のWTBアントニオ・トゥイアキ(2年=ロトルア)に絶妙なキックパス。先制トライを演出すると、後半13分にも再びキックパスでトライにつなげた。

「プレーヤー・オブ・ザ・マッチ」の表彰を受けても、筒口はまず反省した。

「僕個人としてディフェンス面だったり、サインチョイス、ゲームコントロールが、まだまだ足りていない。次の試合までに改善して、今日以上の試合ができるように、頑張っていきたいと思います」

天理大への憧れは昔から…ではなかったという。

「元々あまり大学のことを知らなくて…。知り合いの方の縁があって天理大学を知って、そこからいろいろ調べてみたら、小さい選手でも活躍できることを知りました。『自分も関東のチームを倒して、日本一になりたい』と思いました」

身長170センチ、体重80キロ。決して大柄とはいえない司令塔は、実家の長崎を離れ、奈良での寮生活を選んだ。大学に入るとフィジカル面はもちろん、攻撃の陣形を作るため、的確な指示を送ることに苦労した。今季の開幕戦では、前年最下位の近大にまさかの敗戦。先輩には日頃から「(ピッチ上で)しゃべれ」と促され、成長の過程にいる。

悲願の大学日本一をつかんだ昨季まで、SOは松永拓朗(23=東芝ブレイブルーパス東京)で固定されていた。1年生から活躍した松永と同じように、筒口を抜てきした小松節夫監督(58)は期待を込めて言う。

「落ちついてやっているとは思います。ただ、ゲームの流れの中で切っておかないといけないところ、サインの選択…。経験は(開幕から)3試合分積んでいるけれど、チームをいい方向にもっていくことは、勉強中かなと思います。1試合1試合、勉強を続けて、全体をいい流れに持っていってほしいと思います」

1月、筒口は長崎の実家のテレビで、日本一の頂に立つ天理大の戦いを見た。憧れは背番号10の先輩だ。

「『天理大学すごいな』って思って、ここで4年間必死に頑張ろうと思いました。松永選手が目標です。まだまだ遠い場所にはいるんですが、努力をして、いつかは追い越せるような選手になりたいと思います」

次節の立命館大戦を経て、そこからは関西学院大、京都産業大、同志社大と対峙(たいじ)する。筒口の成長は、王者の伸びしろになる。【松本航】