16年リオデジャネイロ五輪(オリンピック)男子100キロ級の銅メダリスト羽賀龍之介(31=旭化成)が22日、東京・講道館からオンライン柔道教室に参加した。

全日本柔道連盟が22年度に実施を予定している教室の第1回。恩師である朝飛道場(横浜市)の朝飛大館長(59)とともに、全国40弱のチームとつないで実技指導した。

なごやかな雰囲気で、朝飛氏から「昔は強くなかったんだよ」と紹介された羽賀。実際、小学生の時は全国少年大会の団体戦で3位と実力はあったが、勝敗よりも正しい技を身につけられた環境に感謝し「例えば阿部一二三選手なら背負い投げ、丸山城志郎選手なら内股といったように、今のうちに(釣り手と引き手を)2つ持って投げる技を練習してください。この技、というものがあると相手も勝負の時に怖さを感じる。自分も内股に助けられてきた」と重要性を説いた。20年の全日本選手権で優勝した時も、最後は内股。当時の映像も用いて指南した。

一方で、小学校時代は女子選手に抑え込まれて負けていたエピソードも、あらためて披露。「自分は60キロくらいあったのに30キロちょっとの女子に…。あんなに悔しいことはなかった。以来、まねして勝ちたいと寝技を覚えた」。朝飛師直伝の指導は今にも生き、東海大相模高時代には1年生ながら金鷲旗大会で史上初の20人抜きを達成。「そのうち5回くらいは寝技だったくらい、寝技にも助けられた」。離れ業の裏には、幼少時に身につけた確かな技術があった。

質疑応答で「立ち技と寝技、どっちが好きですか?」と聞かれると「立ち技で決める気持ち良さ、場内の盛り上がりも好きだけど」としながらも「どちらも好き」。内股で大半の白星をつかんできたが、確かにリオ五輪の3位決定戦や、優勝した先月の全日本選抜体重別決勝は三角絞めで一本勝ち。同じく先月の全日本選手権でも、男子100キロ超級で期待の中野寛太(天理大)を送り襟絞めで退けたことは記憶に新しい。実体験をまじえて寝技の大切さも強調していた。

けんか四つの戦い方もカメラを通じて伝授した。左組みの羽賀の場合、相手の右足の内側に自身の左足を置くことを求め「大外刈りでも内股でもスムーズに仕掛けられる。時には足を払ったりしながら、その形に持っていけるように」とした。

奥襟を持たれた際には、真っ向から首を上げて抗うのではなく、ずらして外す対処法を披露。「これは大野将平選手がうまいのでYouTubeで見まくって(笑い)」と、旭化成の同期で男子73キロ級の五輪2連覇王者も引き合いに出して画面越しに呼びかけた。

小さな選手が大きな選手に勝つ方法を尋ねられると「より早く動き、相手を崩すことが大事。小内刈り、大内刈りからの背負いとか1つ、2つ技をつなぐといい。自分も20キロ、30キロ、40キロと重い選手をいかにして投げるか考えている」と答えた。

かねて、実際に組み合うことができないオンライン指導について「相性が悪い」と認めたこともあるが、いざ実施すれば分かりやすかった。映像の小窓に目を凝らし「○○道場の選手、上手だね」と、大切な打ち込みを見て細かく声をかけていた。小学生の時に好きだった練習メニューでは「ドッジボール」を挙げて硬さを取りにいき、体づくりに関する質問に対しても「空腹だと体のエネルギーを使ってしまって体重が落ちる。3食にとらわれず、積極的に捕食のおにぎりなどを食べて」。188センチには説得力があった。

質問が殺到して返し切れなかった最後には「いつか実際に会いましょう。『あの時、オンラインに参加していた』と言ってくれるとうれしい」。競技普及のため、日々の稽古で少年少女に影響を与える指導者に向けても「DM(ダイレクトメッセージ)でも何でもいいので聞いてきてください」と声掛けした。

4日の合同練成に続く今月2度目の教室参加。左胸の刺しゅうを指して「ここに全柔連(AJJF)とマスコットが入った道着、もらえるかな」とおどけつつ「アスリート委員会としても、シンプルに柔道人口が減っているので参加した。やはり現役選手の迫力、スピード感というものはあると思うので、世界代表やアジア代表も含め、今後も仲間たちと続けていきたい」と継続を約束した。

オンライン教室は全10回を予定しており、次回6月19日は男子100キロ超級の七戸龍(33=九州電力)を講師に招いて実施される。【木下淳】