スピードスケート女子の18年平昌オリンピック(五輪)500メートル金メダリストで、22日に引退レースを迎える小平奈緒(36=相沢病院)が3日、長野市エムウェーブで練習を公開した。

4月に現役引退を表明。慣れ親しんだ地元長野の同会場で行われる、全日本距離別選手権の500メートル1本に懸けており、氷上トレーニングを公開後の活動報告会見では「最後と決めた舞台に向けて、しみじみと、貴重な時間を楽しむようなレースができてきた。残り18日間、駆け抜けたい思いは変わらないんですけど、最後の舞台では、できるだけ多くの皆さんと共鳴したい。夢に描いていた景色を見られるんじゃないかなと思っています」と期待感を口にした。

引退を決めた後の4、5月は信州大を拠点に基礎体力を強化。2月の北京五輪前に痛めた右足首は「5月末には、機能的には問題ないところまで完治した」(結城匡啓コーチ)という。

6月はチームが長めのフリー期間を設けたため、小平は島根・隠岐の島で個人合宿。8月タイムトライアルではショートトラックの1000メートルで自己ベストを更新したといい「結城コーチから『10年先までやれる』と最高の褒め言葉をいただきました」と、現役を退くことを決めてなお、成長していることを示した。

9月には例年通り北海道・帯広で3週間の合宿。500メートルのタイムトライアルも、五輪前の昨季とほぼ同じタイムが出たといい、今後は本拠エムウェーブで最終調整して22日の現役ラストレースを迎える。

「最後と思いながら…ではなく、本当に最後。そこに向けて、気持ちも思いも満たされていく感じはありながら、でもアスリートとして1つのレースに向かうためには感覚を研ぎ澄まさないと、表現したいことがのってこない。そこは譲らず、感情を遮断してでも研ぎ澄まして、本物のアスリートとしての滑りを見せたい。感情が高ぶる部分もあるんですけど、徐々に言葉にする時間を減らしていって、感覚を研ぎ澄ませていきたい」

支える結城コーチも「これまでの取り組みをレトロスペクティブ(回顧)しながらの練習は、問題の解答集をつくっているような時間だった」と称賛した。小平も「こういうことだったんだ、とトレーニングや準備の正解が分かる夏になった。『知るを楽しむ』をベースにモチベーションは上がりっぱなしでした」と充実の時間を送った。

-目標タイムは? 最後の1本に向けて聞かれると、晴れやかな表情で即答した。

「過去の自分を超えるような滑りができたら。氷の条件、気圧の条件が重ならないとタイムは出ないものなので、自分のベストを尽くせれば。出たタイムが今の私の全て。タイムにこだわらず、ゴールを駆け抜けたい。私の道のり、経験が1本のレースに凝縮されると思うので、ぜひ多くの皆さんに見ていただければなと思います」

出場する女子500メートルは22日の正午すぎから競技が始まる予定となっている。【木下淳】