主役は俺だ! ワールドカップ(W杯)日本代表に選出されたフランカー姫野和樹(25=トヨタ自動車)が、このほど日刊スポーツのインタビューに応じ、初のW杯への思いを語った。

南アフリカを率いて07年W杯を制したジェイク・ホワイト氏、スーパーラグビー5度の優勝経験を持つロビー・ディーンズ氏、前日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏ら、世界の名将が才能を絶賛する男の視線の先には何があるのか。リーチ・マイケル主将の存在、フィジカルへのこだわりなど、その思いに迫った。【取材・構成=奥山将志】

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相手を引きずるように前進する突破力と、ハードタックル。187センチ、108キロ。各世代の日本代表で活躍し、国内外の指導者から将来を嘱望されてきた才能は、ジョセフ体制で日本代表の中心に成長を遂げた。姫野が、桜のジャージーへの思いを強くしたのは、帝京大の寮で見た4年前のW杯。世界を驚かせたあの南アフリカ戦だった。

「日本人が強いんだと世界に証明してくれて、純粋に誇らしかった。当時はけがでラグビーができなかった時期。自分たちも絶対にやれると思わせてくれたし、4年後、日本大会は自分が出るんだと強く思った」

初キャップは17年11月の強豪オーストラリア戦。激しい肉弾戦が求められるFW第3列にあって、デビュー戦でトライを奪うと、日本人離れしたプレーですぐにジョセフHCの信頼を得た。こだわりは日本人が「課題」とされてきたフィジカル。W杯はそれを世界に証明する場でもある。

「根本的なところで『日本人だから』と考えないことが大事だと思っている。テストマッチやスーパーラグビーを経験し、フィジカル面でも十分に通用すると自信を持てた。『日本人は体が小さい。外国人は力が強い』ではメンタル的に負けている。次の世代の子どもたちに『日本人でもやれるんだ』というマインドを伝えることは、日本代表の仕事であり、僕の仕事だとも思っている」

昨年末、共通の関係者を通じて、同じ94年生まれの大リーグ・大谷翔平と都内で会食する機会があった。心に残ったのは、ラグビーの練習方法の中にもヒントを探す大谷の姿勢だった。

「学ばなければいけないと思ったのは貪欲さ。栄養面など、自分がうまくなるために、やれることを全部やる。世界のトップ選手が疑問に思ったことをストレートに聞く。僕は自分が正しいと思うことを大事にするタイプだったが、新しいことも試し、だめならやめようと。そう考え始めるきっかけにもなった」

W杯イヤーの19年。2月の代表合宿から、1人の先輩への徹底マークが始まった。常に視線の先に置いたのは、同じポジションのリーチ・マイケル。尊敬の念をあえてライバル心に置き換えることで、成長のエネルギーに変えてきた。

「一番好きな人間であり、一番尊敬している選手。ただ、リーチさんもいつまでも代表にいるわけではない。リーチさんのような人間に自分が近づき、超えていけば日本代表も強くなると思う。だから『ライバル』とあえて口にして、練習中からフィットネスで負けないとか、小さなことでもとことん意識しようと。それが、自分自身の成長につながると思っている」

社会人1年目。主将の重圧に押しつぶされ、無力さを知った。部屋で1人涙を流す中で、心に浮かんだのは、恩師である帝京大・岩出雅之監督の教えだった。

「岩出監督が言っていた『失敗してもすぐに起き上がれる選手が一流』という言葉を思い出して、ぴんときた。倒されてもすぐに起き上がり、またチームのために貢献する。自分にとって今でも大切にしている言葉。今回のW杯で、世界の一流に挑んでいきたい」。

真っ向からぶつかる。倒れても立ち上がり、また体を張る。桜のジャージーの誇りを、プレーにこめる。