早大が帝京大から公式戦9年ぶりの勝利をあげた。10年以来勝利のない早大は3点を追って迎えた後半ロスタイム、SH斎藤直人主将(4年)が連続攻撃からインゴールに飛び込んで劇的な逆転トライ。対抗戦9連覇を狙う帝京大を34-32で下して5戦全勝とした。慶大に40-3と完勝した明大も5勝無敗。帝京大が4勝1敗で追う。

スタンドの大歓声と悲鳴を浴びて、斎藤がボールを手にラックを跳び越えた。ロスタイムの4分を超えた44分45秒、帝京大ゴール前で連続攻撃を仕掛けながら「いける」と思った瞬間、165センチが飛んだ。「(トライを)取り急がず、取り切ることだけ考えた」。劇的な勝利を振り返った。

後半30分までに8点差をつけられたが「チャンスはある」とチームを引っ張った。ロスタイムに同点となるPGは狙わず「トライでの逆転を全員が共有していた」。最後は自分で決めたが「全員のおかげ」と話し「メンバーだけでなく、帝京の分析をしてくれた控え部員も含めて」と言った。

日本代表候補になりながらワールドカップ(W杯)出場を逃して「悔しい」と話した。それを知った日本代表WTB松島から「ハングリーでいい」と言われたことを聞き「本当ですか。うれしいです」と桐蔭学園高の大先輩に認めてもらえたことを喜んだ。

W杯は主にテレビ録画で見たが、準決勝は2試合とも現地で観戦した。「すごかった」と振り返るとともに「次は自分があの場に」と誓った。この日、明大が勝って対抗戦の早明全勝対決も見えてきたが「目標は日本一なので」と淡々。最終学年で学生王者となり、トップリーグから日本代表としてW杯へ。斎藤はしっかりと先を見ている。【荻島弘一】