<大相撲秋場所>◇千秋楽◇28日◇東京・両国国技館

 東前頭6枚目の安美錦(35=伊勢ケ浜)が「新怪物」に屈した。東前頭10枚目の逸ノ城(21=湊)に押し出しで敗れ、10勝5敗で場所を終えた。

 立ち合いは相手を見ながら左に動いて攻めたが、直後に引いてしまったところをつけ込まれた。注目の対戦に敗れ「上手を取らせないように攻めたんだけど。ちょっと気持ちが入りすぎて、空回りしたかな。じっくりいこうと思ったけど、右を差しきれずにちょっと急いだ。慌てるところじゃないのに」と反省した。

 それでも、10年初場所以来6度目の技能賞を獲得。通算11度目の三賞に「何でもいいから賞が欲しかった。場所前は相撲を取れる状況じゃなかったし」としみじみと話し始めた。

 名古屋場所で古傷の左膝を痛め、左膝内側側副靱帯(じんたい)と前十字靱帯損傷で、7月末から入院。「入院していると、引退じゃないけどもうダメかなあとか、頭に浮かぶ時もある。でも、嫁さんがカバーしてくれて、リハビリとかに送ってくれて、そこでもう1度頑張ろうと思えた。三賞は久しぶりで、もう取れないんじゃないかと思っていたから。(トロフィーが)家に1個もないから。子供にも見せてやりたかったから」と、感慨深げに“復活”の喜びに浸った。

 10月3日で36歳になる。黙々と稽古をこなす理由については「いつまでできるか、あと数えるほどだから、稽古できるなら今やるしかない。いい稽古相手もいるしね」と話した。新たな怪物が出現した場所だったが、巧みな技を繰り出すベテランの奮闘も光った。