<大相撲名古屋場所>◇千秋楽◇26日◇愛知県体育館

 横綱白鵬(24=宮城野)が、横綱朝青龍(28)に下手投げで勝ち、14勝1敗で2場所ぶりの優勝を飾った。元横綱曙に並んで史上9位となる通算11度目の優勝を、24歳4カ月、入幕32場所目と、いずれも歴代3番目の速さで達成した。史上最長タイの4場所連続の14勝で、朝青龍が05年にマークした年間最多勝84勝の更新も見えてきた。取組前は恒例の「協会あいさつ」に遅刻する大失態も、「心技体」の充実を目指す横綱は動揺することなく、賜杯をつかんだ。

 白鵬は心を落ち着かせた。館内は優勝決定戦を期待する「朝青龍コール」。目の前では1差で追う琴欧洲が勝った。負ければ2場所連続の決定戦。土俵下では珍しく大きく息を吐き、呼吸を整えた。「疲れもありましたけど、集中することができました」。朝青龍との激しい巻き替えの応酬。最後は相手の出足を利用した右下手投げで、自らも土俵下に落ちた。通算600回出場の節目で、2場所ぶりに賜杯を奪回した。

 「心」の充実がテーマだった。夏場所は14勝しながら、優勝を日馬富士に奪われた。けいこを再開した6月3日、静かに反省の言葉を口にした。「横綱は心技体が備わっていないといけないというけど…先場所は心が揺らいだ」。夏場所中に会食した後援者も「日馬富士の話題ばかりで、集中できていないのがわかった。横綱は内面がデリケートですから」と証言する。心が乱れたときは一点を見詰め、呼吸を整えるようアドバイスされた。

 場所入りに遅れ、千秋楽恒例の協会あいさつを遅らせた。武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)や朝青龍らを待たせ、本来なら十両取組中に行うあいさつを、取組後にずれ込ませた。前代未聞の遅刻という失態に「お客さん待ったの?

 (影響は)なかった」。バツが悪そうにしながら、動揺することなく土俵に集中した。

 尊敬する双葉山の優勝12回に王手をかけ、「昭和の大横綱、双葉山関に並べればいいと思います」と宣言した。今場所中も宿舎では双葉山に関する本を読みあさり、VTRで研究。「右四つの双葉山さんも右から踏み込んでいた」と「後の先」をモデルにし、14日目から2日間は、手本通りに右から踏み込んだ。「相撲道を1つずつ研究して、努力、精進していきたい」と目を輝かせた。

 24歳4カ月での11度目Vは朝青龍(24歳5カ月)を上回り、歴代3位の若さ。これで初場所から4場所連続14勝以上となった。玉の海(70年秋~71年春)と千代の富士(88年夏~九)と並び、歴代最長の安定ぶりだ。名古屋場所を終えての年間57勝3敗は、史上最多84勝をマークした05年朝青龍のペースに並ぶ。「まずは15日間頑張りたいと思います」。若くて強い横綱は、いつも通りの言葉で締めくくった。【近間康隆】