<大相撲春場所10日目>◇23日◇大阪府立体育会館

 関脇把瑠都(25=尾上)が「4メートル対決」を制し、全勝を守った。幕内で唯一、198センチの自身よりも長身の、203センチの大関琴欧洲(27)を力相撲の末寄り切った。場所前には尾上部屋に近い大阪・大東市の小学校を訪問、作文を送られた。子どもたちの激励をパワーに変えて、悲願の大関とりへ突き進む。11日目には、同じく10連勝の横綱白鵬(25)と対戦する。

 嫌な予感がよぎった。立ち合いで先に手をつくつもりだった把瑠都は、逆に琴欧洲に先に手をつかれた。それでも「待ったするわけにはいかない」と手をつくと勢いよく幕内で唯一、自身より長身の相手にぶつかった。突き、押しから右を差すと、がっぷりの右四つ。大男2人が土俵中央で顔を真っ赤にしての引きつけ合い。琴欧洲の前進をしのぐと、こん身の力で押し返し、寄り切った。

 9日目の魁皇に続き、大関相手に万全の相撲で連勝を伸ばした。支度部屋に戻ると、緊張から解き放たれ笑顔がはじけた。「相手は足腰が強い。(左手親指のケガで)まわしが切れそうだった。ギリギリだった」と熱戦を振り返った。

 大関とりが現実味を帯び、師匠の尾上親方は9日目の取組前に、大関昇進の伝達式の使者を迎える場所を確保。大阪・大東市の宿舎は手狭で、支援者を通じて宿舎から車で10分程度の民家の2つの居間をつなげ、金びょうぶ、赤いじゅうたんなどの、必要なものを借りる手はずを整えた。

 琴欧洲との合わせて4メートル対決を制した活力源は、小さな子どもたちからの激励だった。3月3日、宿舎に近い大東市の南郷小の体育館で、全校児童632人と交流。3時間目の授業を取りやめて約1時間、全20クラスごとに記念撮影に応じ、質問コーナーでは198センチの身長に、驚嘆の声が上がったという。

 その数日後には約200人分の作文が届けられ、尾上部屋関係者は「すごく喜んでいた」と明かした。初の試みに柳生博明校長は「来年は大関として来てほしい」と、話した

 場所前に負傷した左手親指も、山口・防府市から訪れた谷平順トレーナーのお墨付きをもらった。さらに「瞬発系がすごく、(元競輪選手の)中野浩一型の筋肉」と、パワー以外の強さの秘密を証言した。

 11日目は先場所勝っている白鵬との全勝対決。「優勝争い?

 それは明日終わってから」。優勝と大関とり両方が見えてきた。【高田文太】