人気ゲーム「スプラトゥーン2」の全国予選が行われ、全国大会経験者を中心に結成されたチーム「Anti Pop」が無敗で優勝した。

また甲子園の、全国のステージに立てる。地区優勝決定のコールが聞こえた瞬間、リーダーの「望月もち」がステージで男泣きした。

「チームを組んだ4カ月前から毎日ずっと、この瞬間を夢に見ていた。他の大会で優勝したチームの映像を見ながら、いつも姿を自分に置き換えていた。夢がかないました」。ラストチャンスにかけた情熱が涙になって両目からあふれた。第1回大会で全国準優勝、第2回でも全国3位の実力者が「最後のつもりで」と挑んだ大会だった。

周囲から見れば華麗な実績でも、自身の捉え方は違っていた。「あと少しで全国優勝できなかった。自分はうまいプレーヤーじゃない。これが限界だと思った」。5カ月前は19年度大会に出場しないつもりだった。本気で全国優勝を目指したからこそ、軽い気持ちでは挑めなくなった。

人知れず苦しむ中、7月の東海地区大会を観戦した。1度は区切りをつけたはずが、優勝に喜ぶステージの4人を見つめるうちに、胸の奥にこみあげるものがあった。「優勝チームがすごく輝いて見えた。諦められなかった。もう1回だけ、やってみようと思いました」と心を奮い立たせた。

思い立ったら即座に行動した。同じ関西在住で交流のある実力者に声をかけた。「zatto」は全国大会経験者で、プロゲーマーのマネジメント会社「忍ism」と新たに契約を結んだゲーム動画配信者。「でんちゃん」も全国経験があり、日頃から顔を合わせる仲だった。そこにオンラインで募集した「Deslotu5」が加わり「Anti Pop」を結成した。

全国に挑むからには、一切の妥協を排除した。大会までの約4カ月間は、午後9時から約3~4時間のチーム練習を欠かさなかった。練習では常に実戦を想定。大会で使用される8つのステージで3~4戦ごとの約30戦を日課とし、あらゆるタイプのチームと練習試合をした。相手の攻撃を受けて味方が欠けた際に、どうやって陣形を立て直すか。敵陣に攻め込む際の決めごとをどうするか。徹底的に連携を高めた。

仕事があっても、体調が悪くても執念で時間を確保してきた。zattoは「メンタル的につらかった時期もあった」と振り返り、deslotu5も「仕事して、夜中にスプラして、また朝から仕事。大変でした」と明かす。それでも、でんちゃんが「リーダーの熱量がすごかったので。それに引っ張られました」と笑う団結力で走りきった。圧倒的な練習量があったから最後まで落ち着いていた。無敗での地区優勝は必然といえた。

1月の全国大会では、昨年大会と世界大会で優勝したプロチーム「GGBOYZ」など強豪と対戦する。望月もちは「GGBOYZからは、全国で待っていると言われている。やっと追いつけました」と意識する。zattoも「僕の座右の銘は『強くなければつまらない』。優勝したいです」と力を込めた。甲子園の、全国の舞台でも喜びの涙を流す。