19日に広島緒方孝市監督(48)が、暴言でプロ31年目で初退場。その姿を見た日刊スポーツ評論家の広瀬叔功氏(80)は「初退場か。無理もしたんじゃろうの。監督らしくなった」と事もなげに言った。その理由を「監督というのは周りに見られとるからな。あの判定を見て、抗議に出て、怒って。おちおちとベンチには帰れんよ。ベンチの中が、おいおいってなる。ワシもそうじゃった」と続けた。

 広瀬氏にも苦い思い出がある。人生1度の退場劇は1980年(昭55)7月5日。南海の監督だった広瀬氏はストライクゾーンを巡って球審に猛抗議。指揮官の体当たりを引き金に、大騒動になった。広瀬監督、新山コーチ、片平が史上初の3人同時退場。翌日の日刊スポーツには「南海 球界初の不祥事 暴れ鷹 体当たり・首締め・なぐるける」と物騒な見出しが躍っている。

 「1球に生活をかけているんだ。退場は覚悟したが、私の抗議は正しいと信念を持っている」と当時の広瀬監督は熱く語っている。すっかり温厚になった現在は「暴行もいけんし、監督として選手を守れんかったのがもっといけん。守った緒方は立派じゃ」と記憶をたどった。体当たりも暴言もいけんが、妙に納得させられた。【広島担当=池本泰尚】