オフになると耳に入る監督や選手の話は、人間性や野球観が色濃く表れていて、興味深い。26日、札幌市内の室内練習場でトレーニングを終えた日本ハム金子弌大投手(36)の言葉に、驚いた。「早く敗戦処理という言葉をなくしたい。そこで投げる投手が評価されるような時代を作れたら」。

オリックスでエースとして一時代を築き、14年に沢村賞を獲得した右腕から発せられたものとは、思えなかった。壊れた試合の傷を止め、終わらせる。称賛されることのない敗戦処理の投手に目を向けていた。

そんな金子だから、今季、新たに導入した、先発と第2先発を1試合で起用する「ショートスターター」にも前向きだった。実際には普通に先発として使われる機会も多かったが「好き勝手に使ってくれ」と言う。栗山監督は、この気概に「完全に涙。必ずや来年、男にしたい」とイベントで振り返った。金子は言う。「選手の意見は必要ない。監督に投げろと言われたところで、成績を残すのがプロ」。新しいことに挑む覚悟は、誰よりも決まっていたようだ。

年明けには渡米し、トヨタ自動車時代の後輩、中日吉見と自主トレを行い来季に備える。「常識は大事だけど、それにとらわれるのは好きじゃない」。栗山監督が明かしたことだが「勝つために必要なら、僕が(敗戦処理を)やります」と訴えたこともある男だ。優勝のためなら、変化自在に、どんな役割でもまっとうする。栗山監督と二人三脚で生み出すニュースタンダードを、見てみたい。