冷や汗発進だ。センバツに出場した東海大菅生が延長10回、タイブレークで城東を下し、夏の選手権西東京大会のシード権を獲得した。広島、DeNA、阪神など7球団のスカウトが視察する中、「3番一塁」で先発出場したエース勝俣翔貴投手(3年)は2点リードの8回無死満塁で登板。押し出し四球と味方の失策で逆転を許したが、9回以降はピシャリと抑え、サヨナラ勝ちを呼び込んだ。

 準備する間も、道具もなく、マウンドに上がった。登板を告げられると、ファーストミットと手袋を外し、3連続四球と突如乱れた2番手投手の山口からグラブを受け取った。「こういうこともあると思って準備はしていた」と言うが、前のイニングに打順が回り、約10球の立ち投げしかできなかった。しかも前日にブルペン投球しなかったため早合点し、投手用グラブを寮に置いてきた。他人のグラブでも「やるしかないので、気にしないで投げられた」と、打者12人から4三振を奪った。

 元中日の若林弘泰監督は「勝俣は最後の1イニングぐらいの予定だった」と登板を想定していた。ずぶとい神経を持つエースの前倒し起用が奏功し、シード権を確保。胸をなで下ろしていた。【斎藤直樹】